2009年・アメリカ
英国のソフィー・キンセラが書いた『レベッカのお買いもの日記』5巻のうち最初の2巻を原作とする映画。
原作の著者は元金融ジャーナリストだそうで、なるほど。わかりにくい金融・経済について庶民にわかりやすく伝えることを命題としている様子。原作読みたいなぁ。原作の舞台はロンドンだそうですよ。映画ではニューヨーク。
原題は“買い物中毒者の告白”となっております。ワーカホリック(仕事中毒)、アルカホリック(アルコール中毒)みたいな感じでショッパホリック。この主人公レベッカ(アイラ・フィッシャー)ほど極端でなくても、時々買い物でストレス発散とかするわよね。私はするんだ。本のまとめ買い、DVDのまとめ買い、服や小物を買う日も半期に一度くらいあるかなぁ。それでも1回1万数千円が関の山。比べてレベッカ、すげぇぇ!どんだけぇぇ!ほいほい買いすぎ。
お買いもの中毒な私! [DVD] アイラ・フィッシャー ヒュー・ダンシー |
"Desperately important scarf."
(死ぬほど大事なスカーフなの)
手に入れるためなら何でもしちゃう。嘘もつく。なんかこれって一種の強迫観念。今、コレを手に入れなければ私はダメになる!的な。この死ぬほど大事なスカーフが、映画のキーアイテムだよ。確かに美しいスカーフです。
どんな映画?
買い物依存症てのは本当に病気です。アル中と同じなのよ。治す為には大元の心の問題を解決する必要がある。でもレベッカの場合、倹約家の両親のせいで抑圧されたってぐらいしか原因が見つからない。両親にも愛され、親友もいるし、仕事も希望通りではないけれど一応ある。天真爛漫なのが良いところで、どうも依存症ぽくない。
さて、そんなベッキー(レベッカの愛称)の人生を変えようという努力のお話。ファッション誌のライターになりたかったのに、なぜか経済誌のライターに採用されちゃうベッキー。編集長のルーク(ヒュー・ダンシー)に独創的だと褒められ原稿を頼まれるも、経済用語すらわからんちん。そのとんちんかんぶりも楽しい。
経済について難しく語るのは簡単だけど、誰にでもわかりやすい話にするのはとても難しい。この映画にも広告主のゴキゲンを損ねるような記事は載せられないとか、業績悪化でもカットされない役員報酬とか、お手頃ファッション特集記事に高価なブランドを使って価格は小さく載せるとか、そういう身近な社会の仕組みが出てくる。難しいことを楽しくわかりやすく、これをやりたかったんだろうなと思った。
物に支配されるのは馬鹿げたこと。だけど、ちょっとした物で幸せになれちゃう側面もある。例えば思い出のこもったスカーフとか。ルークの言うように「ものの価値は値段と同じではない」わけだ。でもルークは元から“持てる者”であり、だからこその価値観だろうな。“持たざる者”だったレベッカが、物の価値は思い入れ込みだって気づくまで失敗ばかり。
ルークは英国育ちなのでクイーンズイングリッシュを喋り、庶民のレベッカは普通の米語を喋り、ファッション誌の編集長はひどいフランス訛り。なんだか楽しかったですよ。フランス訛りを演じているのは英国女優クリスティン・スコット・トーマス(『ブーリン家の姉妹』、『モンタナの風に抱かれて』、『イングリッシュ・ペイシェント』など)。
言語と言えば、フィンランド語まで出てきました。あのシーンでノキアの人はこのように言っています。
「私はフィンランドのサウナとシナモンロールが恋しくてね。あなたはフィンランドの何が一番恋しいですか?」
それに対してベッキーは「あなたみたいな男がいるからフィンランドを離れたのよ!」と。で、なんでノキアの人がベッキーを気に入ったのか?シナモンロールをフィンランドではkorvapuustitと言い、その意味は“耳をピシャリ(平手宇打ち)”!ノキアの人、なんてユーモアのある子だ、と思ったのかね。
ベッキーの両親はジョーン・キューザックとジョン・グッドマンが演じていて、なんかほっとした。グッドマンて、見てるだけで泣けてくる。こんな愛溢れる両親がいて、なんで買い物依存症になるのよ?親友だってありえないくらいデキた人だし。ベッキーはたぶん自信がないのよね。自信のなさをファッションで覆い隠しているのね。
ところで。予告編にあったワインオープナー買うわ!のシーン、本編にあった?私、ぼんやりしていたのかな。なかったと思うんだけど、見た人、教えて!
関連作品のようなもの
原作は現在5巻まで発売されてます。 レベッカのお買いもの日記 1 (ヴィレッジブックス S キ 1-1) ソフィー・キンセラ |
この映画とは、スタイリストが同じ。 プラダを着た悪魔 (特別編) [DVD] アン・ハサウェイ; メリル・ストリープ |
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