猫の毛玉 映画館

映画感想文を体内で丸めて吐き出す。

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ソーシャル・ネットワーク 【やってやる! この世の仕組みに 挑戦だ】

tag ヒューマン 青春 法廷

『ソーシャル・ネットワーク』 THE SOCIAL NETWORK
2010年・アメリカ
SNS最大手、Facebook創設を題材にしたITオタクの青春・友情・訴訟もの。

 監督はデヴィッド・フィンチャー。実話を基にしたサクセスストーリーであり、青春物語。これは、Facebookが受精し着床し分裂し、巨大な有機生命体に育つさまを描いている。人生の皮肉、悲哀、人の性(さが)、夢の実現・・・そんなものが描かれた映画。Facebookに興味がなくても、この人間ドラマは面白いから観たら良いよ!

映画タイトルには皮肉が込められていると思う。"social network"=社会的繋がり・社会のネットワーク。創設者のマーク・ザッカーバーグは、ネット上で社会的繋がりをシステム化した。でも現実に彼が求めたもの、だけどうまく入っていけないもの、それが社会のネットワーク。作ったものとは裏腹に、彼は社会から浮いている。映画のラストシーンがそれを如実に物語っていて、ユーモアたっぷりでありながら哀しい。自分もネットワークの一員になりたいのだ、と淡々とキーを押すのだ。
(ひいては私たち自身のディスコミュニケーションを皮肉っているともいえる)

 ベン・メズリックのノンフィクション小説『facebook』が原作。この本は、Facebook創設者マーク・ザッカーバーグ本人には取材拒否されたため、関係者―特にエドゥアルド・サヴェリンと双子のリンクルボス兄弟―に取材して書かれたもの。ザッカーバーグはこの映画を観て「事実に忠実なのは服装だけだけだね」と感想を言った。

ソーシャル・ネットワーク (デビッド・フィンチャー 監督) [DVD]ソーシャル・ネットワーク[DVD]
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、アーミー・ハマー、ルーニー・マーラ、ジャスティン・ティンバーレイク

友情、ビジネス、自己実現、孤独・・・。何かデカイことやって世の中変えてやる!そういう話です。キャストは若手実力派がそろい踏み。将来、幻の映画と言われるかもね。



 いやあ、良い映画だった!ヽ(´ー`)ノまず彼女(ルーニー・マーラ)と口論になるオープニング・シークエンスで、ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)の天才ぶりを見事に印象づける。天才の人は普通に会話できないからね。現実の彼がどうなのかは不明だけど、映画の中では天才型。凡人には理解できないし、ついていけない。

彼の天才ぶりは、訴訟沙汰になっても気にとめないあたりにも表れている。Facebookを成功させること、世界に広げること、それしか関心がないのだ。そして、天才の身近にいる人たちは傷つけられるのが宿命。天才に悪気はない。映画で描かれる彼は見事に典型的な天才!それはもう、仕方ないなって思うぐらい。

 主軸はザッカーバーグがFacebookを立ち上げ大きくしていくこと。そこにハンサムな双子兄弟や、彼女だったエリカのエピソードが深く関わる。でも何より、相棒として最初から一緒にやってきたエドゥアルド(アンドリュー・ガーフィールド)との関係のシフト、途中から参加したナップスター創設者ショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)への心酔。これが面白い。三角関係のようなハラハラ感がある。いや、ビジネスだけど。

特にショーン・パーカーへの心酔ぶりはわかりやすい。世界を変えられる、変えてみせる、と音楽業界に喧嘩をうって変革に成功していたショーン・パーカー。ザッカーバーグにしてみれば自分と同じ感覚を持ち、世の中の仕組みを変えてやりたい気持ちも一緒で、その上パーカーには実績があった。憧れるし、目標にもするし、崇拝すらするだろう。その気持ちは最終的にパーカーのヘマですーっと冷めるにしても。

 ところで本物のパーカーはこの映画を観て、自分とはまったく違う人物に感じたという。彼はシリコンバレーのITオタで、あんな派手な女性関係はありえないから。でもまあ、映画でのパーカーはカリスマ性があって魅力的で、そのくせどこか気弱なとこがあるリアルな人物だった。演じたジャスティンは元々歌い手さんで、それが音楽業界を凹ましてやったパーカーを演じているのも皮肉が効いている。ジャスティン、役者として評価されたので今後が楽しみですな。

 ザッカーバーグを金に汚いという人もいる。でもこの映画を観たら、そうは思えないはず。金よりも夢の実現に全力な姿が描かれているから。ヤフーやマイクロソフトに天文学的な値段でFacebookを売却することもできたのに、そうしなかった。それが、彼が単なる金の亡者ではない証拠(しかも稼ぎの半分を寄付にまわしているんだ、彼は)。社会を“見える化”すること、公正な世界を築くこと、ザッカーバーグはそんな理想を実現するために仕事をしている。

 ただ、映画の内容がすべて事実と思うのは間違っている。あくまでも実話を基に脚色した映画作品なのだから。現実との大きな違いの例をあげると。実際のザッカーバーグにはハーバード在学中から一緒の恋人プリシラ・チャンがいて、映画で描かれたようなエリカへの腹立ちやかすかな復讐心はあり得ないこと。映画がエリカに始まりエリカに終わるのは、まとまりがあってドラマ性があって素晴らしい。でもそれは事実ではない。
※追記:エリカは"自分を受け入れない社会"の象徴かな、と思います。冒頭で会話して拒絶され、中盤に和解しようと近づいて受け入れられず、最後には一方的に繋がりを求める。

 事実かどうかは置いといて、鶏のエピソードに大笑いしたよ!居心地の悪いユーモアがあちこちに散りばめられていて面白いんだ。ショーン・パーカーとの初会食シーンも、ザッカーバーグが1人だけ頷きまくってるのが妙に可笑しい。



 キャストについても言いたいことは多々あるものの、この2人にだけ触れておきたい。

 エドエゥアルド役のアンドリュー・ガーフィールドは新スパイダーマン・シリーズで主役を務める男!彼の繊細さ、翳りはとても魅力的。レッドフォード監督の『大いなる陰謀』でレッドフォードとサシで会話する学生役、『Dr.パルナサスの鏡』で道化役、3/26公開の『わたしを離さないで』と着々と良い俳優になってます。(『わたしを離さないで』の日本版予告編を観てはイケナイ!楽しみが減る!)

 エリカ役のルーニー・マーラは、フィンチャーの次作『ミレニアム』3部作のハリウッド・リメイク版で主人公の1人リスベットを演じます。パンクな天才ハッカーですよ。今度は彼女が天才だ!
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関連作品のようなもの
facebook映画の原作となった本。ザッカーバーグ本人に取材は出来なかった様子。
facebook
ベン・メズリック
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)こちらの本はザッカーバーグに独占取材して書かれたもの。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
デビッド・カークパトリック
ラス・ヴェガスをブッつぶせ!原作者メズリックは実話ベース映画『ラスベガスをぶっつぶせ』の原作者でもある!
ラス・ヴェガスをブッつぶせ!
ベン・メズリック

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ザ・タウン 【脱けられない この地に根ざす 強盗団】

tag 犯罪 サスペンス アクション 恋愛映画 ヒューマン

『ザ・タウン』 THE TOWN
2010年・アメリカ
ベン・アフレック監督&主演。チャック・ホーガン著『強盗こそ、われらが宿命』映画化。

 これは凄く良い映画ですが、ラストがどうも好きじゃなかった。ユーモアあり、緊張感あり、迫力のカーチェイスと銃撃戦ありで完璧なんだけど!前半が少々退屈なのと、ラストのもやっと感が惜しい!この点は後ほど詳述。そんなアフレック監督長編映画2作目。本作が評価されて続々と大きな作品の監督をオファーされていますよ。アフラック、ニャフラック!

 キャストには先日(2011/1/2)癌で亡くなった名脇役ピート・ポスルスウェイトも。町の裏社会の顔役、花屋の役ですよ。あと、『ハート・ロッカー』のジェレミー・レナーが、強盗団のメンバー且つ主人公ダグ(ベン・アフレック)の親友ジェムを演じています。さすがに身のこなしがクール!見た目はとっつぁん坊やみたいだけど。

Ost: the Townthe Town オリジナル・サウンドトラック
監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック、ジェレミ-・レナ―、レベッカ・ホール、ジョン・ハム、ブレイク・ライヴリー、クリス・クーパー

強盗多発地帯ボストンはチャールズタウン。強盗を生業とする男たち。それは家業として、父から息子に受け継がれた。

コトノハ
"I will see you, this side or the other."
(また会えるさ、この世かあの世で)

 the other sideといえばあの世のこと。レッチリ(Red Hot Chili Peppers)の歌で"Otherside"っあるよな!アレ大好き!それはともかく、この台詞カッコイイな。最初ダグの父ちゃん(クリス・クーパー)が言う台詞で、のちにダグも使う。


 チャールズタウンのアイリッシュ系強盗団。そのリーダー、ダグ。町の犯罪を取り仕切る花屋のもと、今日もせっせと強盗を働く。無音警報機を使われて仕方なく銀行支配人の女性クレア(レベッカ・ホール)を人質にとり逃走。ソツなく彼女を解放し、無事に仕事を終える。

画像はコチラのダウンロード壁紙から。
TT_WPs1600_NB_003.jpg

 アイリッシュ系だけあって、聖パトリックデーの象徴である緑のクローバー(シャムロック)がいたるところに見えます。そんな細部へのコダワリも楽しい。

 映画の前半1/3ぐらいはね、ちょっと退屈でした。銀行強盗シーンなんか臨場感あって良かったんだけど、ダグとクレア(レベッカ・ホール)が仲良くなっていくあたりは正直タルイ。といっても、ノンベンダラリと話が進むわけでなく、要所要所オモシロやハラハラが挟まってて飽きさせない。ジェムの首のタトゥーを気にするダグとか面白かったよ。

TT_WPs1600_NB_001[1]

 そして尼僧のコスプレ(↑画像)で次の強盗を終え、逃走するときのカーチェイスが大迫力!スピード感のあるブレ、車載カメラのようなアングルでキューっとカーブを曲がる緊張感!とにかく凄い!ここから話はノンストップで一気に面白く転がっていくよ!終盤の銃撃戦も凄い。

 私は強盗ものとかギャング、マフィアものの映画があまり好きではないのだけど。だってワルイじゃん。でもこの映画はワルイけれど、ワルを持ち上げていない感じが好き。抜けだせない犯罪世界のしがらみ、友情、そんな悲哀がきちんと描かれていた。特に危ないキレ・キャラのジェムが、途中で友達思いの結構良いヤツだと判るあたりは好き。ワルはワルだけどな!

 あと、ユーモア分がかなりツボ!逃走して車から降りた瞬間、尼僧姿のまま見つめ合ってしばらく固まってるシーンは爆笑!緊張感の続いた後にこうやって笑いが置かれていると、それがヌケになって疲れずに観られる。

 ちなみに最後にバッグを開けたときフルーツが出てくる、アレ。オレンジだかタンジェリンだかの柑橘はフロリダが名産地で、それにちなんでるワケですな。手掛かりを残しといた、と。

TT_WPs1600_NB_002.jpg

 さて。原作があるわけですが。アフレックは原作に忠実に作りたかったようで、最初の完成試写ではなんと4時間の作品だったとか!長ぇぇよ!当然カットしてくれと言われますわな。次に出来たのが2時間50分版。それもまだ長いわな。で、2時間10分以内に収めてくれとスタジオに言われて、この2時間8分の映画が出来たと。完成品の人物描写の掘り下げが足りなく感じるのは、このカットにカットを重ねた結果みたいね。

DVD/BDのエクステンデッド版がリリースされて、そちらは約25分長い2時間半になっているとのこと。日本版もこの長いの、出るかしら?観たい!

 映画のラストは何か締まりがない感じでモヤっとしてたのだけど、原作のラストとは違うのだそうだ。原作は映画よりも哀しいラストとのこと。その哀しい展開のラストも撮影したけれど、試写で観客に不評だったので却下されてしまった。さすがアメリカン。あんまり鬱エンドは受け容れられないのよね。わしゃ、原作と同じラストで観たかったニャー。

原作ではクリスタ(ブレイク・ライヴリー)の幼い娘は誰の子なのか明らかにされているとのことなので、読んでみるのも良いかも。
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関連作品のようなもの
強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈上〉 (ヴィレッジブックス)原作本は上下巻。本の原題は"Prince of Thieves"で強盗団の王子!
強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈上〉 (ヴィレッジブックス)
チャック ホーガン
強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈下〉 (ヴィレッジブックス)映画とは違う結末!
強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈下〉 (ヴィレッジブックス)
チャック ホーガン
CSI:科学捜査班 シーズン1 コンプリートDVD BOX-1犯罪に詳しいのね、と言われたダグはCSI全部観てるから!と返す。
CSI:科学捜査班 シーズン1 コンプリートDVD BOX-1
エリック・スマンダ、ロバート・デヴィッド・ホール 他
フリントストーン/モダン石器時代 [DVD]仕事を尋ねられたダグは石工だという。フリントストーンみたいさって。
フリントストーン/モダン石器時代 [DVD]
ジョン・グッドマン、ハル・ベリー 他

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完全なる報復 【この正義 納得出来ない 哀しみを】

tag ヒューマン サスペンス 犯罪 法廷

『完全なる報復』 LAW ABIDING CITIZEN
2009年・アメリカ
ジェラルド・バトラーの製作会社が放つ第一弾!アメリカ司法制度に挑む男。

 待ってたよヽ(´ー`)ノジェリー!ロマコメではなく、男臭いジェラルド・バトラーが観たかった皆様、コレですよ!日本公開されて本当良かった!で、邦題は…え?『完全なる報復』??う~ん、観終わるとこの邦題がしっくりこないデスよ。確かに報復措置なのですが、報復・復讐といった言葉だけで表せるものではない、と。

原題は“法を遵守する市民”の意味。善良な一般市民、とでもいいますか。犯罪を犯しても、司法取引で善良な一般市民になることができる(若しくは刑を軽減される)。うまく弁論すれば、明らかに黒でも保釈が認められたりね。そんな皮肉。

LAC_800x600_A.jpg監督:F・ゲイリー・グレイ
出演:ジェラルド・バトラー、ジェイミー・フォックス、レスリー・ビブ、ヴィオラ・デイビス

妻子を目の前で殺された男が、全てを賭けて司法制度に戦いを挑む!

コトノハ
"Can't fight fate."
(運命には逆らえない)

 残虐な犯人が妻子を殺したときの言葉。のちに遺されたクライド(ジェラルド・バトラー)もこの台詞を繰り返す。運命を押しつけられた男が、今度は運命を押しつける側にまわり、最後には自らの運命を決める。


 アメリカのドラマや映画を観ているとよく耳にする、司法取引。例えば、ジョディ・フォスターがレイプ被害者を演じた『告発の行方』でも、ある時点で弁護士(ケリー・マクギリス)が裁判に勝てないことを悟り司法取引に踏み切る。それを知った被害者は荒れ狂う、なんて展開がありました。

本作では司法取引が部分的正義の実現の為だけではなく、検事の成績維持のためにも利用されている側面まで描いている。一説によれば、司法取引で決着をつける事件は8割にも登るとか。アメリカの正義なんて、こんなもんであるよ。

今回の画像はココから。なぜか最小サイズのものしかダウンロードできない。
LAC_800x600_C.jpg

 ジェリー演じるクライドが、犯人への復讐だけでなく、当時司法取引に関わったメンバーにも制裁を加えていく物語。本人は「復讐じゃない」と言うけれど、いやいや、復讐ですよ。でもそれだけじゃない。このクソったれな汚い穴だらけの司法制度を告発するんだ!世に知らしめてやる!そんな気概。

 クライドの天才的な計略。それに振り回される司法側。なんだかコレが気持ち良い。判事に面と向かって罵倒するシーンなどは笑いすら出てくるほどの爽快さ。犯人への復讐を遂げた後、簡単に逮捕収監されるクライド。が、釈放しなければ当時の弁護士と検事と判事を殺すと脅す。それが彼の申し出た司法取引。獄中にいながら、なぜ彼はこんな事件を起こすことが出来るのか?

LAC_800x600_B.jpg

 彼を担当した検事ニック(ジェイミー・フォックス)は野心に燃えるバリバリの若手だった。それだけに、司法制度に疑問を感じるでもなく、淡々と仕事をこなすのみ。ドライなんだな。でも、そんな彼の司法取引についての考え方がどう変わっていくのか。そこが一つのキモと言えましょう。

 緊張感の続く映画ではあるけど、ところどころに笑いが散りばめられていて良いヌケになってます。獄中、同室の男との会話は面白くて、それだけに続く展開でギョっとしてしまう。クライドの静かな、冷静な狂気は、時に激しく燃える。

 もちょっとアクション・サスペンスを期待しちゃってた私。実体はアクション分ごく少ないリーガル・サスペンス。頭脳派なジェラルド・バトラーでござったよ。それもまた良し!ジェリーが魅力的な映画としては『タイムライン』がピカイチお薦め。

LAC_800x600_A.jpg

 私は正義なんて、心の中にしか存在しないと思ってる。時代、国、法律、宗教、立場によって、正義の中身は全く違うのだから。倫理も同じ。客観的正義なんてものは幻。だから、何が正義か?なんて問いかけは無意味。この映画では、検事は法律を根拠に正義を貫こうとし、クライドは自分の心の声を根拠に正義を貫こうとする。どちらが正しいのか、という問題ではない。それぞれに正義、なのだ。私の正義、あなたの正義。

 ひとつ難点を言えば、ラストのニックの計画が杜撰すぎやしないかってこと。クライドがどの時点でアレするか、わからないだろうに!それ、ヘタしたら自分がお陀仏じゃぜ!
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関連作品のようなもの
ばかげた裁判に殺されかけた男―正義の国アメリカの司法制度が生んだ最悪の冤罪事件実録ノンフィクション本。こちらも司法制度と闘った男。
ばかげた裁判に殺されかけた男―正義の国アメリカの司法制度が生んだ最悪の冤罪事件
トマ ルメール
ザ・ハリケーン [DVD]ボクシングものかと思いきや、冤罪を晴らそうとする感動の実話もの。
ザ・ハリケーン [DVD]
デンゼル・ワシントン
告発の行方 [DVD]レイプ事件で、司法取引されて怒りまくったりも。
告発の行方 [DVD]
ジョディ・フォスター、ケリー・マクギリス 他

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僕が結婚を決めたワケ 【親友の すべてを知ってる わけじゃない】

tag コメディ ヒューマン

『僕が結婚を決めたワケ』 THE DILEMMA
2010年・アメリカ
ロン・ハワード監督の新作コメディドラマ。中年男の友情物語。

 声を大にして言いたい!原題は“ジレンマ”だと!邦題が全然合ってないんですよ。別に、主人公が結婚に迷って何かキッカケがあって大きな決断する…なんて話では全くないのだ。違う、違う、そうじゃ、そうじゃな~い!

原題通りに、各人がジレンマを抱えながら生きていてそれをどう解消するかって物語。解消できなくても、どうやって昇華するのかっていう。
Ost: the Dilemma『僕が結婚を決めたワケ』オリジナル・サウンドトラック

 理想の夫婦である親友ニック&ジェニーヴァ。だけど彼らの結婚生活だって順風満帆なわけでなく…。



 元ギャンブル依存症で口達者なベンチャー会社経営者の主人公ロニーに『ドッジボール』『クール・ドライ・プレイス』『イントゥ・ザ・ワイルド』ヴィンス・ヴォーン。その親友で天才エンジニアのニックに『モール・コップ』ケヴィン・ジェームズ

主にこの2人の親友同士の関係が描かれます。ズバリ男コメディと言って良い!2人の凸凹コンビっぷりが素敵。舌好調なロニーと、シャイな技術屋のニック。ロニーはニックの才能に人生を賭けていて、賭け事は止めたけど根本的にギャンブル・ジャンキーは治ってない。そんなロニーがニックの才能を売り込む係。胃痛持ちでプレッシャーに弱いニックは、ロニーに励まされて自信を付けたりする。お互いに自分にないモノを持ってる相手を尊敬してるんだなって雰囲気が良い!

 ニックの妻ジェニーヴァに魔女顔のウィノナ・ライダー。その浮気相手でオカシナ変人にチャニング・テイタム。この役を観てテイタムを見る目が変わった!凄く笑わせてもらったよ。この映画一番の笑いどころは彼の出演シーンだもん!

 そしてロニーの恋人ベスに我が青春のアイドルジェニファー・コネリー。一時は激やせしてたけど、現在は健康的な容貌で相変わらず美しいよ。卓球で得点決めて飛び跳ねてキャッキャはしゃいでるシーンなんて本当可愛い!

 あとロニー&ニックの仕事相手となるクイーン・ラティファは出番が少ないけれど強烈。良いよな、この人の存在感!『シカゴ』のママ・モートン役、『マンハッタンで抱きしめて』のクラブ・シンガー役なんかが好きさ。


 ニック達が理想の夫婦!という主人公ロニー。だけどある日、目撃しちゃう。ジェニーヴァが若い男とキスしてるのを!そこからロニーは親友に事実を伝えるべきかどうか悩む。これがメインのジレンマ。ジェニーヴァと話し合ってもそこにはジレンマ。ジェニーヴァ自身も順調でない結婚生活にジレンマ。ニックも同じ理由でジレンマ。シェフとして働くベスも、とある件でジレンマを抱える。

 映画のオープニングに、4人の会話シーンがある。どれだけ親しくても、本当にその人の全てを知ることは難しい。そんな会話。これがひとつのテーマとなっていて、学生時代からの親友であっても、愛する恋人・妻・夫であっても、知らない面があるものだ、と映画全体に染み渡っている。そこら辺も巧い!

 ロニー&ニックの仕事が車のエンジン・デザインなのだけど、これがまた面白い。いわゆるエコカー、電気自動車のエンジン開発をクライスラーに提案する。それが、昔ながらのセクシーなイグゾーストノートをエコカーでも味わおう!ってコンセプト。確かにエコカーはエンジン音が静かすぎて、健全安全好青年なイメージよね。エコカーなのにワイルドなエンジン音がしたら、そりゃクールだ!そして仕事に没頭するニックがカッコイイ。

“エコカーである”が“エンジン音はワイルドである”。これを両立させるのもジレンマだ!物語は終盤、急速に絡み合ってみんなのジレンマ解消に向かう。そこでは正直であれ、と繰り返される。でも正直に何でもかんでも話すのって、私はそれ優しさじゃないと思うけどな。自分の中にグッとしまっておいて飲み込んで、墓場まで持って行く。そういう優しさもあるじゃない?

 ともあれ、「焼いてやる!顔を焼いてやる!」と暴れまくるヴィンス・ヴォーンに大笑いし、巧いストーリーテリングに惹きつけられ、少し懐かしい感じの中年コメディに大満足。40男の、こんな微笑ましい友情を観て笑顔にならざるを得ないラストでした。
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関連作品のようなもの
ミラクル [DVD]カート・ラッセルのスピーチ真似してた。
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カート・ラッセル、パトリシア・クラークソン 他
大統領の陰謀 [DVD]私はディープスロートよ!
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ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード 他
ディープ・スロート [DVD]でもラティファが観た?と聞いたのはコッチのエロ映画だった。
ディープ・スロート [DVD]
リンダ・ラヴレース

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蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH 【対話する キミも私も ここにいる】

tag アニメ SF アクション ヒューマン 青春 戦争

『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』
2010年・日本
2004年に放映されたTVアニメ『蒼穹のファフナー』の2年後を描く劇場版!

 2150年。平和の戻った竜宮島(たつみやじま)。そこに一隻の艦が突っ込んでくる。中で眠っていた存在とは…?TVシリーズが終わって、続きを待ち望んでいたファンにとって、この劇場版は素晴らしいプレゼント!観て良かった!逆にTV版を観たことない人が観てもさっぱり意味が分からないだろう。設定や今までのことの説明は一切ない。思い切って切り捨ててしまったのが、清々しいほどだ。

20110116_4147.jpg キャラデザは相変わらずですが、心なし頬の斜線が薄くなっているような気がします。主題歌は引き続きangelaさん。アキじゃない方。

映画館は東京ではシネマサンシャイン池袋オンリーです。略してシネサン。

 ファフナー・スタンプラリーやってたけど未完成。2カ所は無料、もう2カ所は店を有料利用/商品購入しないとスタンプ押せない。ズコー!



 脚本はTV版の後半を担当した冲方丁(うぶかたとう)さん。TVアニメ『ヒロイック・エイジ』や劇場アニメ『マルドゥック・スクランブル』の脚本書いてた方です。好きです。元々は作家さんですが、メディアによって書き分けるあたりが凄い。

 えー。TV版見てない方は容赦なく置いていきます。そういう映画です。っていうか、一本の映画、とはいえないのかもしれないね。だってファンへの贈り物だもん!ファフナーなんて知らないよ~って方にはまず前日譚である通称『右左』=『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』をどうぞ。コチラはTVスペシャルで1時間単発もの。鬱アニメだけどね。哀しくて切なくて胸が熱くなるんだ!

シネサン入口。大々的にフィーチャーされてます!デカイ!
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 さて本編。TV版終了時点の2年後を描いたものだけあって、各キャラクターが成長してる。各人の現在の状況をサラっと見せていく、その演出だけでニヤニヤもの!カノンだけが見た目大きく変わっているので、最初誰だかわからなかったわい。で、彼女たちが楽園で話し合ってる内容がU計画ってのが笑いどころ!

 竜宮島の外では人類軍がフェストゥムを核攻撃し、虐殺している。その炎の中、総士を守る一個のフェストゥム。焼き尽くされ、怒りに燃えるフェストゥム軍は人類軍の武器を真似して徹底抗戦。戦いは、終わらせる機会を失したまま憎しみが憎しみを呼ぶ泥沼になっていた。

 世界では戦争が続き、竜宮島には“客人”が現れる。人型のフェストゥム来主操(くるすみさお)はキリスト的存在。神の子であり神の遣いとしてやって来た。彼自身が痛みを覚え苦しみを背負って生きることで、フェストゥム軍にも人類軍にも竜宮島にも希望が生まれる。来主の目覚めのシーンは甲洋そっくり!そして乙姫を彷彿とさせる。

 カノンの機体がマーク・ドライツェン(13)と不吉な数字だったり、広登がゴウバインの仮面を付けて搭乗したり、L計画を持ち出したり、司令官の吐血とか、何かこう不穏なムードが漂いまくります。どうなるんだろう…と陰鬱な気持ちで観ていたよ。
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 初の第一世代同士による自然受胎で産まれた美羽。この子、時間経過を考えれば1歳半ぐらいだろうに、大きいしよく喋る。さすがフェストゥムの因子をナチュラルに持ってるだけのことはあるな!この子や甲洋や乙姫や紅音だった者、そして総士もちゃんと活躍を見せてくれる。胸熱!

 自分で選択すること、決めること。対話。母と娘。この世に生まれ、生きること。この星で生まれること。敵は自分の映し鏡でもあること。憎しみには憎しみしか返ってこないこと。相手を受容することの難しさと、それが出来たときに起きる変化。フェストゥムは生と死を受け入れ、母性を理解し始めた。私はここにいる、この星に生きる、そして死ぬ。新しい命に世界を託して。痛みに耐え、今を生きる歓びを知ることができた。未来は明るいはずだ。
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関連作品のようなもの
蒼穹のファフナーHEAVEN&EARTH イメージミニアルバム(DVD付)サントラはまた別にあるようですが。Shangri-La入り!
蒼穹のファフナーHEAVEN&EARTH イメージミニアルバム(DVD付)
angela
蒼穹主題歌はアンジェラさん!くっだっけ♪
蒼穹
angela
蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT 通常版 [DVD]こちらはTVアニメの前日譚です。ひたすら熱く哀しい。総士も出てくるよ。
蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT 通常版 [DVD]
宮野真守、甲斐田裕子 他
蒼穹のファフナー DVD-BOX【初回限定生産版】今やプレミア価格で20万近い高級品。TVアニメ全26話+右左+特典!
蒼穹のファフナー DVD-BOX【初回限定生産版】
真壁一騎:石井真、皆城総士:喜安浩平 他
【蒼穹のファフナーHEAVEN AND EARTH】蒼穹のファフナーHEAVEN AND EARTH 女子制服 サイズ:Ladies Mなんと!こんなのものまで売ってるのか!
蒼穹のファフナーHEAVEN AND EARTH 女子制服 サイズ:Ladies M

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きみがくれた未来 【奇跡には 起きた理由が ちゃんとある】

tag ヒューマン 恋愛映画 青春 スポーツ

『きみがくれた未来』 CHARLIE ST. CLOUD
2010年・アメリカ=カナダ
人生は生ける者の為に。ザック・エフロン主演の喪失と再生のドラマ。

 原作はベン・シャーウッドの同名小説。将来有望な若者が突然の事故で人生が変わってしまう、という喪失と再生のヒューマンドラマ。

 原題は主人公の氏名チャーリー・セント=クラウド。それで邦題は何なの?“きみ”って誰を指してるの?最後までわからなかった。雰囲気だけで付けたっぽい邦題に戸惑いを隠せない。

 全体的にメロではあるけど、ストーリー自体がきちんと面白かったよ。テイストとしては『ラブリーボーン』の生者視点か。若者の再生ドラマとして良い出来なので、ザックのファンじゃなくても観てみたら良いと思います。
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コトノハ
"You hurt because you're alive."
(痛いのは、生きてるからだよ)

 弟サムが兄チャーリーに言う台詞。心も体も、痛むのは生きてる証拠。そして、こう言う弟の心情が切ない。

どんな映画?
 小型ヨットの才能があって、レースではいつも優勝。その実績を買われて大学進学も決まった。そんな高校生チャーリー(ザック・エフロン)が、卒業パーティーの晩に事故に遭い、人生が大きく変わってしまう。

今回の画像はココここここのダウンロード画像。
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 チャーリーは、チャーリーにしか見えない存在と会話する。それがとても曖昧で、今チャーリーが話しているのはこの世の者なのか死者なのか、判然としない。その描き方がストーリーとうまく合わさって成功している。映画では弟の存在がかなり確定的に描かれているのが残念だが、原作小説ではより曖昧な存在。チャーリーの頭の中の産物なのか、本当にそこに死者がいるのか明確にされていない。

弟と共にヨットレース!
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 弟とキャッキャウフフで遊ぶ姿は微笑ましく、同時に切ない。あんなに切ない泥んこ遊びシーンは初めて観たわよ。でも時間は過ぎて、いい加減に前を向いて歩かなきゃいけなくなる。人生は生きている者の為にあるのだから。死者を忘れるのではなく、乗り越えるのでもなく、心に抱え込んで共に生きていかなくては。そこでキッカケとなるのがヨット乗りの女の子テス(アマンダ・クルー)。

アリッサ・ミラノ似、またはブリタニー・マーフィー似の彼女。
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 若い頃のアリッサ・ミラノ、若しくはブリタニー・マーフィー似の健康的な女の子!彼女をとるか、弟をとるか。弟との守るべき約束。ゆえにどこへも行けないチャーリー。そして自分が生かされた理由。フラットラインから帰還した奇跡。

 チャーリーは、自分を助けた救命士フロリオ(レイ・リオッタ)の言葉に気づかされ、未来を生きる為の力をもらう。このレイ・リオッタ、出番は少ないがとにかく素晴らしい!チャーリーの肉体だけでなく、精神も救ったのは彼だと思う。邦題の指す“きみ”は彼以外に考えられない!もしくはチャーリー本人が“きみ”だな。

暗く沈み、哀しみに満ちた表情が胸に刺さる。
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 『ラブリーボーン』では判りやすい生と死のあわいの世界が描かれた。でもコチラは現実と変わりない空間に、彼の夢想とも現実ともつかない精神世界が広がっている。たぶんフィジカルではない、心の中での出来事なのだと思う。

 序盤の交通事故について、「加害者が飲酒運転」という説明がサラっとされている。そこでお薦めの飲酒運転事故映画『ライセンス・トゥ・キル 殺しのライセンス』はいかがですか~?デンゼル・ワシントンも出てるよ。スパイ映画っぽい題名だけど、そのライセンスとは運転免許証なのだ。

弟かわゆす!
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 映画全体的に音楽が安っぽかったのが残念ポイント。映像はキレイよ。ズームイン・ズームアウトや、浮遊感、ぐるりと回転する動き。カメラワークが素晴らしい。ストーリー的には中ダレするよ!するけどね!あの中ダレも振り返ってみれば必要だったのさ。まあそこは我慢して下さい。

 終盤の展開では、3日間放置されたアレがちょっと(´д`)えーってなった。原作では無理のない説明がされているので、映画版の説明不足ってことで。無粋でもちゃんと説明すべきだったと思うよ、こればっかしは。

 あと、墓石の拓本て本当に趣味の一ジャンルとして確立してるのかね!『小さな恋のメロディ』で知ったときは、現実感がなかったけども。この映画でも言及されてるし、考えてみたら日本でも狛犬の拓本とか趣味にしてる人がいるくらいだもんな。でも墓石は個人情報ダダ漏れな気がする。

 チャーリーの母親役でチラっとキム・ベイシンガーが出てるよ!これが『あの日、欲望の大地で』とか『8Mile』みたいな下流の貧しい母親像ドンピシャ。どことなく薄幸そうなのよね。
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ベン・シャーウッド
セブンティーン・アゲイン [Blu-ray]ザック・エフロン主演の良作コメディ!ギークな親友のキャラがとにかく凄い。
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エクスペリメント 【目に見える 神がいるなら 思考停止】

tag サスペンス ヒューマン

『エクスペリメント』 The Experiment
2010年・アメリカ
ドイツ映画『es エス』のリメイク。実際の心理学実験をモデルとする。

 1971年に行われたアイヒマン・テストの一種、ロールプレイングを用いた心理学実験―スタンフォード大学監獄実験を元ネタにした映画。14日間の予定が6日目で中止を余儀なくされた、実験の倫理問題を扱う際に必ず引き合いに出される悪名高い実験。心理学を勉強すると絶対に教科書に載ってますよ。

 実際のスタンフォード大学監獄実験については、オリジナルのドイツ映画『es [エス]』の感想エントリに書いたので省略。興味のある方は読んでみてください。

 さて本作。イライジャ・ウッドも出演予定だったんだけど、撮影2,3日で降板しちゃったそうです。そんなわけでエイドリアン・ブロディとフォレスト・ウィテカーの一騎打ち的様相。

 オリジナル版と概ね同じキャラクター配置&イベント発生。けど、このリメイク版では主題がどうも違う。善悪の判断基準を何に委ね、どう行動するか、という点を描いています。なので不条理ホラーな展開になってしまっている印象を受けました。私はオリジナル版の方が好きだぜ。
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どんな映画?
 オリジナル版は、普通の人達が徐々に役割にはまり込んでエスカレートする話。なんと実験を行っていた側もハマッてしまったという実話のエピソードも盛り込んで、映画的脚色は施したものの大筋で事実に沿った内容でした。制服に服従する囚人チーム、与えられた権力を力一杯行使する看守チーム。普通の、その辺の、誰でもが、かかってしまう心理の恐ろしさ!

 で、このリメイク版は実話からちょっと離れたとこに存在している感。実験が始まると、実験者側が全く描かれず、その意図が不明。それが不気味さを醸し出し、狙いは何なのか、一体この光景を観ているのか、いないのかと被験者と一緒に不安な気持ちになります。この演出は、しかしながらラストにもやもや感を残すのみで、うまく働いていない気がしたな。これじゃ不条理ホラーじゃん!

 失敗の一因はフォレスト・ウィテカーがはまり過ぎたことにあると思う。看守チームに入るウィテカーは、手にした権力に酔い、箍が外れていく。その様子が、どう見てもサイコだ。あれー、この人は最初からソノ気があったんだー、やっべえ!としか思えないワケ。日常生活での鬱憤があったんじゃないか、家庭での抑圧された何かがあったんじゃないか。

 これ、そういう映画にしちゃダメだと思うんだ。ソノ気がない普通の人達が、異常な環境下で支配―服従の関係をエスカレートさせていく狂気が欲しいんだよ!人間心理の闇をエグらなきゃ!

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 でもね。このリメイク版で言いたいことは、そういうことじゃなかったっぽいんだ。被験者応募の面接テープが時折挟まれるのだけど、そこでは「神を信じるか?」「判断基準は何か?」といった問答が繰り広げられる。そう、善悪とか正誤の判断基準をどこに置くのか。そしてそれは絶対的に正しいのか。それがテーマになってますた。

 実験では赤いランプが神のような存在。点いたら実験は中止=間違い。点かなければ、それは正しいことをしている証拠。絶対の判断基準になってるわけだ。囚人チームに罰を与える、その罰はどんなものが適正か。罰を考え実行したのち、30分経っても赤ランプが点かなければ正しい判断と保証される。目に見えて自分の行いを判断してくれる赤ランプ!そして赤ランプへの依存が始まる。点かなければ、何をしても構わないのだ。責任転嫁ともいえるね。

 怖いよね。この映画は、たまたま実験という環境下で赤ランプ(の向こうにいるはずの実験者)が判断基準になっているけれど。これと同じ事は幾らでも現実に溢れているじゃないか。ヒトラー、宗教、聖書、国家元首、政府、チームリーダー、会社、先生、或いは親。赤ランプの様子を窺うように、彼らの様子を窺っていないだろうか。彼らの判断に盲目的に従っていたら、SSの二の舞。火事になった教会に人々を閉じ込めておけと命令されたら、その通りにするのか。自分は悪くない、これは秩序を守る為だ、と。自分は正しいのだ、と。

 誰にでも起こりうることで、私だってどんなにキレイゴトを言ってみても、いざその場になってみなきゃどんな行動をするのかわからない。役割、集団、権威、制服、命令…。普段の自分なら決してしないことも、してしまう可能性はいつだってある。
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es[エス] [DVD]オリジナルのドイツ映画。これは面白いよ!
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モーリッツ・ブライプトロイ、クリスティアン・ベッケル 他
フルメタル・ジャケット [Blu-ray]この映画の鬼軍曹みたいって台詞があった。この映画も戦争という状況が人間を変えてしまう。
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若き勇者たち [DVD]彼女が父親に繰り返し見せられた映画として登場。これも非日常空間(戦争)でのサバイバル。
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パトリック・スウェイジ

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アメリア 永遠の翼 【共に飛ぶ 私が翼 あなた風】

tag ヒューマン 歴史 恋愛映画

『アメリア 永遠の翼』 AMELIA
2009年・アメリカ=カナダ
女性飛行家アメリア・イアハートの伝記。

 リンドバーグの大西洋単独無着陸飛行から間もなく。リンドバーグっつっても、今すぐ~キスミー~ウォウウォウ♪じゃない方ね。1928年、大西洋横断飛行を成功させた初の女性、アメリア・イアハート。女性の地位向上活動や、その後の更なる飛行チャレンジで全米を熱狂させた、文字通りに飛んでる女!

 アメリア・イアハートと言えば、博物館の展示たちが命を持って動き回るコメディ『ナイト ミュージアム2』にも出てきました。アチラではエイミー・アダムスがイキイキと演じていましたが、本作ではヒラリー・スワンクがなりきり演技!映画中に実物のアメリアの写真が出てくると、そのソックリさに驚きます。と、いうことはだ。マット・デイモン=アメリア・イアハートか。

 ここで描かれているのはアメリアの自由な精神と、彼女を支えた夫パットナムの深い愛。アメリアの過去や、パットナムの離婚した家庭、国内レースでの出遅れエピソードなどはバッサリ切り捨てて語りません。女性の社会進出を推進した、進歩的で愛すべきアメリアという人物像を知ることの出来る映画です。夫婦の愛情物語でもあるしね。
Amelia (Score)Amelia (Score)
Various Artists

コトノハ
"For me, anywhere you are."
(僕にとっては、キミのいるとこさ)

 「家に帰ろう」と言われて「家ってどこ?」と問うアメリアに、こう答える夫の素敵さよ!当時、こんな風に自由に夢を追い危険を冒す女性の帰りを待っている男性なんて、そうそういなかったことだろう。ただ無事を祈って待つことは辛いけれど、夫パットナムは全力でサポートして、帰りを待ってくれた。

演じるリチャード・ギアの包み込むような優しい表情が良いですぞ。とにかくギア様の深い愛情を湛えた男らしさ、懐の深さにカーッ!惚れるね!

どんな映画?
 映画はアメリアが、編集者パットナムのもとに呼ばれて訪問するところから描く。大西洋横断をやる気はあるか?その体験記を出版すればパットナムは儲かる。かくして、パットナムはアメリアの後見人としてパトロン探し、資金調達、広報活動に勤しむことになる。アメリアが翼なら、パットナムは彼女を飛ばす風といったところ。

 映画は単に時間軸に沿って人生を追いかけるのではなく、アメリアの最大の挑戦―赤道上世界一周飛行の開始から終了までを縦軸として、そこに至るまでの過去をミルフィーユ状に挟み込む構造になっています。世界一周に使われた機体は銀色のロッキード・エレクトラ。場面転換して機体が銀色なら、それは世界一周飛行の描写です。(それまでは赤、オレンジの機体)

 飛行そのものよりも、アメリアとパットナムの夫婦の在り方が面白く素敵だった。自由なアメリア、尽くすパットナム。そしてアメリアの新たな恋。空を飛ぶ者同士で気の合うヴィダル(ユアン・マクレガー)に惹かれるのも理解できる。まあでも、パットナム可哀相。耐えるパットナムがまた素敵。とはいえ、アメリアとパットナムの信頼関係が建て直されたとき、ヴィダルに対してのアメリアの態度にちょっとムカっときた。

 金策や離陸失敗、ヴィダルとのロマンスなど、輝かしくない面もしっかり描いてくれたのはとても良かった。弱気になるアメリア、理解して励ます夫。アメリア人気を高めるために裏であれこれ画策する夫の姿とか、いやらしくて泣ける。それでも、どんな事があっても力強く前進して、飛ぶことを楽しむアメリアは清々しい。

 冒険前の別れ際に夫が必ず言う"See you"(じゃあまた)の言葉も重たくて。帰ってこいよ、ええいつだって、なんて短い会話もまたジーンとくる!飛び立つアメリア、見送るパットナム。いろいろあったけど、素敵な夫婦になったじゃないか。2人の関係性の変化もまた映画の見所。史実ベースなだけに結末が既にわかっている分、一層切なさが増すというもの。(知らない人のためにココでは詳述を控えます)

 女性の社会進出、資金集めでCMに出たりブランドを作ったり、といったとこが『プリティ・リーグ』を思い出した。アチラは戦争で選手がいなくなったから女子でプロ野球やる話なんだけど、すごく面白いからお薦め!

 飛行士仲間としてクリストファー・エクルストンやアリスのミア・ワシコウスカもちょっとずつだけど出てるよ!ミアは『ジェーン・エア』の映画化で主演する次作が超楽しみ。

《アメリア・イアハート参考サイト》
かなり詳しい⇒wikipedia ―アメリア・イアハート
映画の後の足跡を辿る⇒アメリア・イアハートを探して!
英文公式サイト⇒The Official Website of Amelia Earhart

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関連作品のようなもの
ラスト・フライトどうも絶版の様子。最後の飛行記録を夫がまとめた本。
ラスト・フライト
アメリア イヤハート
アメリア・イヤハート―それでも空を飛びたかった女性 (愛と勇気をあたえた人びと)伝記本。
アメリア・イヤハート―それでも空を飛びたかった女性 (愛と勇気をあたえた人びと)
リチャード テームズ
Amelia Earhart: The Final Flight [VHS] [Import]ダイアン・キートンがアメリアを演じた映画も。日本ではVHSのみ、廃盤『ラストフライト』。
Amelia Earhart: The Final Flight [VHS] [Import]
Diane Keaton、Rutger Hauer 他
ナイト ミュージアム2 [Blu-ray]博物館で蘇った、エイミー・アダムス演じるアメリア。大いに飛んでます。
ナイト ミュージアム2 [Blu-ray]
ベン・スティラー、ロビン・ウィリアムズ 他

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ノルウェイの森 【死と生と 光と闇と 愛と性】

tag ヒューマン 恋愛映画 青春

『ノルウェイの森』 NORWEGIAN WOOD
2010年・日本
村上春樹の1987年のベストセラーをトラン・アン・ユン監督が映画化。

 ノルウェイの森…と聞いて初めに思い浮かぶのはノルウェイジャン・フォレスト・キャット!村上春樹と角川春樹と村上龍の中で誰が好きかといえば角川春樹!この、時代を作った小説に、私は何の思い入れもない。

 私が中学生の頃にこの本が出版され、ベストセラーになった。本屋に行けば平積みで、クリスマスみたいな赤と緑の表紙が並んでいた。周りは熱狂していた。その頃の私は、シドニィ・シェルダンや氷室冴子にハマっていて村上春樹は読まなかった。大体、『ノルウェイの森』は官能小説だって言われてて、まだエロを受け付けてなかった純真な私には穢れた書物だったのだ。寝転がって炭酸を飲みながら、そんな穢れた本は読めない。

 というわけで、原作未読のまま今日に至り、そのまま映画を観てきましたよ!12/11からの公開なので、文芸映画好き、原作好き、雰囲気映画好き、マツケン好き、玉山鉄二好きは観に行くべし!ただし、エンタテインメントではないので注意。これは、生と死と性を描いた2時間超の詩の一篇。

 タイトルはビートルズの曲"NORWEGIAN WOOD"から。映画全体に流れる雰囲気が、雪に閉ざされた寒々とした常緑樹の森って感じだったので、そんな意味もあるのかな。迷い込んだけど森から出て春を迎える人もいれば、そのまま凍り付いて戻れなくなる人もいる。
ノルウェイの森 (松山ケンイチ 出演) [DVD]ノルウェイの森[DVD]
松山ケンイチ

どんな映画?
 高校時代に親友キズキ(高良健吾)が自殺し、心に傷を負ったワタナベ(松山ケンイチ)。彼は東京の大学に進む。キズキの幼馴染み兼恋人だった直子(菊地凛子)もまた深く傷つき。二人は偶然、東京で再会する。

バイバイ、ママ [DVD] キズキとの3人の高校時代の描写から映画は始まる。仲の良いカップルと、その親友。キズキがなぜ自殺したのかもわからない。17歳で、何を思ったのか。または、理由なんてなかったのか。置いていかれる恋人・直子のことを少しでも考えたのだろうか。この自殺シーンは、ケヴィン・ベーコン監督作『バイバイ、ママ』(左画像)を思い起こした。

 そして東京。1969年。大学内では学生運動が盛んで、ワタナベのルームメイトもまたのめり込んでいた(ここにも死の影が散りばめてある)。ワタナベはそれを横目でチラと観るだけで、そこに何の意味も見いだせない。一人読書に耽る。それはたぶん、答えを探していたんだろう。キズキの死を受け止めるための答えを。

 ワタナベと直子の恋は痛々しく、彼らを繋ぐのは死んだキズキの存在。キズキの話はしなくても、二人の間にはいつも横たわっていただろう。直子は20歳の誕生日にワタナベと寝たことをキッカケに、どんどん精神のバランスを欠いていく。ワタナベの前から姿を消し、療養に行ってしまう。ワタナベにとって、直子はとんだ地雷女じゃないか!

 直子への思いを抱えつつ、大学で出会った生命力に溢れた女性・緑(水原希子)にも惹かれるワタナベ。直子とは、あらゆる意味で対照的な緑。直子は死、病、過去、闇、哀しみ、愛への疑問、不安、内向き、ミステリアスといった言葉で語られるとしたら。緑は生、健康、未来、光、喜び、愛を肯定、安らぎ、外向き、明け透けといったところ。直子は死に取り憑かれているが、緑は命そのもの。そう、ちょうど5月の新緑のようにね。

 直子も緑も、大事な人を亡くしたという点は共通してる。直子はそれを受け容れられず、緑は受け容れた。もちろん、17歳で自殺されてしまったのを受け容れるのは相当にキツいことで、比べるのはフェアじゃないけど。自殺が罪なのは、遺された者が苦しむからだよ。

 全編死の影に包まれ、でもそこでもがくワタナベを通して生きる希望、生き続けることを選んだ人間の強さが感じられる。大したストーリーでもないのに、ミニマルな世界なのに、この映画には感情の振り切れるサマがありありと描かれている。言っちゃなんだが“雰囲気映画”なのに、心の奥を揺すぶるものがある。映画は総合芸術。本作は、映像や音使いや俳優の演技すべて合わせたときに最大限強い力が発揮される、そんな映画だった。AKB48が一人一人でで見ると大したことないのに集団で動いてると可愛く見えるのと一緒か。あ、誰か敵に回した?

 明るくイキイキした緑色の映像、一面の雪、ふわりと舐める山脈、草原をわたる風の音、降りしきる雨音。すべてが美しい(撮影はリー・ピンビン!)。ライティングもとても美しく、暗がりでの青みを帯びた映像は艶めかしい。光り輝く木々、陰のかかる表情。室内の暗さ。この陰影は素晴らしい!流れる弦楽器の音もまた哀しい。

 ワタナベの先輩永沢(高貴な魂を持った俗物)役に玉山鉄二。その恋人ハツミ役に初音映莉子。サイドストーリー的に語られるこの二人の関係もまた哀しい。ハツミがワタナベを詰問するシーンは凄かった!ワタナベに向けて永沢への疑問を口にしているのだ。愛は人を生かし、愛は人を殺す。愛のために生きるのか、愛のために死ぬのか。

ベロニカは死ぬことにした [DVD] 直子の心の病や、療養所の描写を観ると、どこかパウロ・コエーリョの『ベロニカは死ぬことにした』を思い起こした。あれも、生と死、愛と性を描いていたな。映画版(左画像)はなぜか日本映画で、主演は真木よう子!おっぱい!映画版の雰囲気はこの『ノルウェイの森』に似て“雰囲気映画”になってたよ。

 ところで、2回出てくる、部屋でチープなプラスチックのミニテーブルに食べ物を置いて床に座って食べるシーンはベトナムっぽかった。これは監督がベトナム系だからなのかな。特に緑の家で食べるシーンは、家屋や景色の雰囲気も含めてベトナムっぽかったぞ。

 小説の台詞をそのまま台本にしたような台詞はちょっと上滑りしてたけど、それもこの映画の味なのかもしれない。で、官能小説って言われてたのは、あながち間違っちゃないな、と納得したりもした。すぐに「やった、やらない」とか言い出すし。やたらに性が人生問題に絡んでくるのが、私にはしっくりこなかった。愛と性は切り離せないとはいえ、そこまで?って思いでいっぱい。

 いやあ、それにしても松山ケンイチ凄いな。感情抑制から終盤にバツンと弾けて、そこからまた空虚に戻り、愛の渇望へと走るあたり。直子の存在のお陰で、ワタナベはキズキの死を乗り越え。緑の存在のお陰で、生きることを選べた。緑の強さって、一体どこからくるんだろう?自らが強くあることで、他人をも強くする。それは素晴らしいことだ。
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関連作品のようなもの
ノルウェイの森 上 (講談社文庫)官能小説と言われて、手に取ることもなかった原作。
ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
村上 春樹
ノルウェイの森 下 (講談社文庫)表紙は赤と緑で、正反対の色を表す。危険な赤、安らぎの緑。
ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
村上 春樹
ノルウェイの森 公式ガイドブック (1週間MOOK)ガイドブックまで出たぞ!
ノルウェイの森 公式ガイドブック (1週間MOOK)
アミューズメント出版部
ノルウェイの森 オリジナル・サウンドトラックレディオヘッドのギタリスト、グリーンウッドが音楽担当!
ノルウェイの森 オリジナル・サウンドトラック
サントラ、カン 他
The Beatles 1962-1966映画にも出てくる「ノルウェイの森」"NORWEGIAN WOOD"を収録。
The Beatles 1962-1966
ザ・ビートルズ

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リトル・ランボーズ 【共に観る 父を知らない 子らの夢】

tag ヒューマン コメディ 青春

『リトル・ランボーズ』 SON OF RAMBOW
2007年・イギリス=フランス=ドイツ
『ランボー』を観て映画作りを始める子ども達の友情。

 舞台は1982年英国郊外。主人公は11歳の少年ウィルとリー・カーターの二人。『ランボー』を映画泥棒したカーターと、ひょんなことから彼の家で『ランボー』を観たウィル。一緒に映画を作って育まれる絆。ランボーへの憧れは、彼らに欠けた父への憧憬。

 スタローンの『ランボー』を観ておく必要はまったくない!少年達がジャングルでサバイバルするような映画でもない!子供の友情物語をユーモアたっぷりに描いたもの。たくさん笑って、なぜだか涙も出ちゃうような、そんな素敵な映画です。

 エンディング・クレジットが流れる中、ウィルとカーターの短い会話が声だけ挟まれます。これもまたキュート!本編が終わってもすぐに席を立っちゃダメよ。ジュヴナイルものの傑作といって過言でないよ!
Son of RambowSon of Rambow
Various Artists

コトノハ
"Good morning, Lee Carter. I'm here to help you!"
(おはようございます、リー・カーター!お手伝いに来ました!)

 張り切って、映画のコスチュームを着てカーターの家の玄関に現れたウィルの台詞。躾けの良い子なので、言葉使いもとても良い。ウィルの俗世間離れしたイノセントが、ズレてて可笑しい&可愛い!抑圧されてきた子が初めて映画を観てヽ(´ー`)ノハジけちゃった感が、喜びが迸る様子を見ていると楽しい。

どんな映画?
 '80年代の英国!この雰囲気だけで素敵ですが、一貫して子どもの目線で描かれているところが素晴らしい。想像の世界はもちろん、二人の家庭の問題もあくまで子どもらしい理解でさらっと描かれている。そこが、深刻にならず笑って観れて、だけど心を揺する所以なのかも。

本家公式サイト日本公式サイトの壁紙ダウンロード画像を使用。
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 ウィルは厳しく世俗の娯楽を禁じられている教会に所属し、TVも映画もポップスもダンスも禁じられている。学校の授業でTVを観るときは廊下に出て待っていなきゃならない。リー・カーターに出会ったのも、一人廊下でTVが終わるのを待っている時だった。カーターは先生達が頭を抱える問題児!このミスマッチな少年コンビが面白い。

 ウィルの家庭が信仰しているプリマス同胞派(キリスト集会)は、英国で起こった宗教運動で牧師や聖職者を置かずに教会活動をするもの、だそうな。プリマスはこの運動が発展した土地の名前。映画で描かれたように、世俗的な娯楽を禁止し慎ましく暮らす人々。そんな同胞派の中でもいろいろ分派があり、集会によっても規範が違うようです。中にはインターネットの使用を禁じる閉鎖的な分派もあるそうな。

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 この二人の他に、ちょうどフランスからの交換留学生が来ていて、そのいつもとは違う興奮も描かれている。真面目で地味なフランス生徒が次々バスから降りてくる。でも最後に衝撃的な生徒ディディエが姿を見せる。英国の生徒達はみんな彼に夢中になる!

 ディディエのエピソードが二人の映画作りに絡んできて、話は転機を迎える。ウィルは最初、悪たれのカーターに刺激を受け、ワイルドに子どもらしく遊び、悪い事を無邪気に真似していた。次にはディディエの大人っぽいパンクな遊びを覚える。ディディエのお気に入りのウィルは、ディディエの子分達の尊敬も受けられる。対して、カーターは相変わらず悪ガキのハミダシ者扱い。生じる亀裂。

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 イングランドでは義務教育が16歳まで。そのあと大学受験に必要な勉強をするシックスス・フォームなる段階がある。映画に出てきた上級生用のコモン・ルームは、シックスス・フォームの生徒専用。授業がないときなどココで過ごすんだそうだ。詳しくは下記リンク【イングランドの教育制度】の項を参照。
イギリスの教育 (Wikipediaより)

 ウィルを演じた子はフレッシュでイノセントで天然ぽさが凄く良かった!カーターを演じた子も本当に役にピッタリの悪タレ顔で、仕草も悪ガキで素晴らしかった!カーターの家の家業が老人ホームで、その利用者である老人との触れあいが少し描かれる。これもまた、あくまで子ども目線なので重くならない。そう、子どもの頃は世界がこんな風に見えていたなあって、胸がいっぱいになるような描き方なの。

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 ユーモア分で一番笑ったのが、カーターが自分にケチャップを塗りたくって、牛に「いつか付けられるよ」と毒づくとこ。子どもらしいよね!あと、香り付き消しゴム懐かしス!私もちょっと集めたなあ!板チョコとかソフトクリームとかの。美味しい匂い、するのよね。

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 この映画、もうラストの凄い凄さは本当に凄かった!なんてことない演出なのに、みんな笑顔なのに、観てるこっちは涙が出ちゃうんだ。兄弟がいる人には特にグッとくるかも。ちなみに、どこかに英国の監督エドガー・ライトがカメオ出演している模様。チラっと出てくる先生役とか。

 終盤、帰りのバスに乗るディディエの表情が良い。英国の子ども達には彼の存在が非日常だったわけで、熱病のように浮かれてたんだろうな。子どもって、そういうものだよね。一方、彼の存在が日常であるフランスの生徒達にとっては、彼は変人・負け犬的存在なのだろうね。ディディエの顔に広がる哀しみと寂しさが味わい深く、この映画にピリリとスパイスを加えていましたよ。
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ランボー [Blu-ray]夢中になるよね!カッコイイ闘う男に!
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Yentl (1983 Film)ラスト、カーターが行く映画館で上映されている映画『愛のイエントル』。これはサントラ。
Yentl (1983 Film)
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