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崖の上のポニョ

tag ファンタジー ホラー アニメ

『崖の上のポニョ』
2008年・日本

宮崎駿が送る病気なアニメーション。
タイトルで「崖の上の」と言っているが、本当は海の中のポニョだ。
海から陸にあがり、本作終了時点で崖の上で暮らすことになるポニョだ。
そう思うと、なんだか妙なタイトルなんである。

それはそうと3D・CGアニメ全盛の時代にこれだけの手描きアニメを作り上げるところがスゴイ。
わざと平面的に表現する場面もあって、そこらへんが面白いなと。
そして絵が恐い。波を魚のように描き、そこに眼まで付けるし。
追記⇒米版『崖の上のポニョ』予告編
崖の上のポニョ サウンドトラック崖の上のポニョ
(監督 宮崎駿) [DVD]


コトノハ


「半漁人でもいいですか?」

5歳の子供はUMAとか好きだよね。気持ち悪いものとか不思議が大好き。
そこにつけこんで、手に負えなくなったポニョの魔法の力を奪うために、5歳の宗介にポニョを押し付ける。
ちょっとひどい。

どんな映画?
人魚姫の現代日本版ということで、素直に子供の冒険を楽しむべき映画。

ではあるけれど。
神話的解釈は次章でちょいちょい触れることにして、この映画の恐さを少し書いてみる。

何が恐いって、町がまるごと波に飲まれるという描写だ。
僅かに残った高台でポニョと宗介は生き残っているかのように見えるが、わざわざ船出するんである。
小さな船は棺おけでもあることを連想して、自ら冥界に向かったとも解釈できる。
船出すると、そこにはデボン紀の古代魚が悠々と泳ぎ、古めかしい格好をした一家族がボートの上に座っている。
美しすぎる水と緑に囲まれた、まるきり別世界だ。
あの世、冥府、天国、何と言っても良いが、そこは次元と時とヒトの手を超えた世界だ。

これは何?
町がまるごと死んだ話なのか?
この世から離れて次の世界に進んだのか?

それまで歩行困難だったお婆ちゃんたちが元気に駆けっこする姿は『コクーン』ぽくて良い。
でもそれは、この世ではないからこそ、なのか?

神話性の解釈
クトゥルー(クトゥルフ)神話とニーベルングの指輪をガッチャンコしたような、不条理ホラーアニメね。
(クトゥルー神話は、1920~30年代に書かれたラブクラフトの小説群を基にした世界観であり、厳密な意味での神話ではない。
また、ニーベルングの指輪も北欧神話を基にワーグナーが創作したものであり、純粋な意味での神話ではない)


まずクトゥルー神話的なモチーフは、ポニョとその家族の存在。

<家族構成>
ポニョ母: デボン紀の海を懐かしむ大女
ポニョ父: 人間をやめて海に棲み太古の海を復活させようとする
子供達 :  無数の人面魚 なぜかポニョだけサイズが大きい


ポニョ母の髪の毛は赤く長くうねうねしていてタコを思わせる。
巨大なタコといえばクトゥルー神の姿を連想させる。太平洋の深いところに眠る、パワフルな神。

ポニョ父フジモト(これは苗字ではなく名前か通り名なのだろう。フジ=不死を連想させる)は人間であったもの。
ヒトの支配ではなく太古の海が支配する世界を望んでいるのが、クトゥルー神の信者っぽい。
余談ながら彼の存在は駿自身なのではないかなぁ。
稚魚(こども)たちに「ずっと穢れないでいてほぢい」とか言うし。

その両親から生まれたモノはインスマスの民(深きものと人間が異種交配して生まれた半漁人)だと思われる。

で、結局。
クトゥルー神話では、力あるもの(神々)が不在な隙間にヒトが蔓延っているだけというベースがある。
宇宙から飛来した神々の、地球支配権争いが今はないから、ヒトが支配している気になっているだけなんである。
無力で矮小で儚い存在、人間。
この時代がいつ終わるとも知れない、宇宙への恐怖。見えない大きな力への恐怖。
ポニョが「なんとなく怖い」と言われるのは、このような思想が流れているからではないか。


ニーベルングの指輪的なモチーフは、ポニョの幼生の名にある。
父・フジモトが呼ぶその名は、なんと「ブリュンヒルド」。
いやぁ!ギョっとした!魚だけに。

ブリュンヒルドは、冥界であり神の館であるヴァルハラへの案内人であった。
そして、父(神)の意にそぐわぬ事をして神性を奪われ、眠らされて城に幽閉されるのだ。
城の周りには炎が巡らされ、並外れて勇敢な者しか入れない。
そこに勇者シグルド様が入城して彼女にキスをすると、ブリュンヒルドはやっと目覚めることができた。
まぁ、その後はたいした悲劇なのでここでは省力。

このブリュンヒルドの名をもつポニョ。
だけども、父にその名を呼ばれたとき、名を拒否している。
待っているだけ、眠っているだけの女じゃないわ!というわけだ。
だからポニョは行動する。
父が何百年もかけて精製したパワー溢れる生命の水を解放して我が力とする。
(文字通り、何百年もの積み重ねが水の泡に)
そして自ら人間の姿に化けて宗介を探すのだ。

ポニョ、恐い。
宗介の乗った車を追いかけるポニョの恐さは、とても感覚的なものだ。
名づけるなら「怪奇!半漁人の呪い」とかそんなん。

まあ、なんだ、つまり、ブリュンヒルドであることを拒否する女の話なのだ。
故にキスをするのも、ポニョからなのだ。

ブリュンヒルドもポニョも、パワーを奪われて人間として生まれ変わるという意味においては共通だ。
その第2の人生の始まりが、試練を超えた者のキスである点も。
この世の次の世界に誘う者、という意味でも、もしかしたら共通なのかもしれない。
それは物語のラストをどう解釈するかによって違ってくる。
うん、私はやっぱり、アレは次の世なんだと思った。

宗介にポニョと名づけられるのを受け入れたのは、それを「ゲド戦記」でいうところの真の名として受け取ったからではないか。
(駿はゲド戦記信者)
真の名は時がくると賢者などから与えられるもので、それまでは仮の呼び名で呼ばれる。
(ゲドは子供時代ダニーと呼ばれていた)
そう考えると、ポニョ母が「ポニョ・・・。良い名をもらったのね」とポニョ父に言うのも不思議ではなくなる。
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ぽちゃ | URL | 2008年09月03日(Wed)14:36 [EDIT]

こんにちは、はじめまして
お邪魔しますm(__)m

僕は、崖の上のポニョを見たときに
見終わったあと、何故か恐怖感を覚えました
ラストシーンを見たとき
「ポニョはある意味得体の知れないものなのに、宗介はこれから先、幸せになれるのだろか?」という不安も襲ってきました。
それ以外にも見ている間に何度か何とも言えない恐怖のようなものを感じたんです。
この恐怖感は何なのだろうと思っていましたが記事を読ませて頂いて神話とのつながりを知り、もしかしたらそれが恐怖感の原因だったのかもなぁって納得出来ました。
どうもありがとうございましたm(__)m
どうもお邪魔いたしましたm(__)m

>ぽちゃさま。

P | URL | 2008年09月03日(Wed)22:47 [EDIT]

なんだか全体的にもの恐ろしい感じでしたよね。
ポニョと宗介の今後が心配というのもわかります。
でもたぶん次の世に住んでいるので大丈夫なのかなぁ、なんて。
太陽(ケアハウス)の下で幼くして結婚したも同然の二人の結婚証人はお婆ちゃんたちでしたね。
なぜ老い先短い彼女達だけなのか、それも気になるところであります。
もう死とは無縁の世界だからなのかな、と。

駿がモチーフとしている2つの物語は、どちらも神話ではなく、作られた神話的物語だというのも興味深いです。

って、全部個人的な解釈ですから、作者の意図と全然違うかもしれませんよ。

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