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イントゥ・ザ・ワイルド 【彷徨いて 見つけたるもの まことの名】

tag ヒューマン 青春 ロードムービー

『イントゥ・ザ・ワイルド』 Into the Wild
2007年・アメリカ
ノンフィクション小説『荒野へ』の映画化。監督・脚本はショーン・ペン様。10年越しで映画化が実現した渾身の作品。

これはすごい。
大学を卒業した頭脳明晰で繊細な若者クリスが、すべてを捨てて旅をする話。
旅の終わりにアラスカの荒野に分け入り、そこで自然の恵みに頼って生きる暮らしを約4ヶ月続けた。
その果てに彼が見たものとは…。
“イントゥ・ザ・ワイルド”イントゥ・ザ・ワイルド[DVD]
(2009/02/27)
エミール・ハーシュ
マーシャ・ゲイ・ハーデン

コトノハ


"How important it is in life not necessarily to be strong... but to feel strong. "
(人生において重要なのは必ずしも強くあることではなく、自分の強さを感じることだ)

強い人間なんていない。強くあろうとするかどうかだ、と思う。そしてこの言葉のように、確かな強さを積み重ねて生きられたら素敵なことだ。

どんな映画?
 良い意味でショーン・ペンをまったく感じなかった。概ね客観的に描かれているからだろうか。役者のチョイスに彼らしさが見えるが、なんかもうそれどころではない映画なんだお。

 兎にも角にも映像の美しさは感動的。陽の差す森の中、そこに生きる動物、激流、雪に閉ざされた荒野…。すべてがすぐそこにあるような臨場感をもって迫ってくる。観ているだけで涙が出てくるこの映像美!余計な台詞はなく、ただ提示される大自然とその懐に入り込んだ一人の青年の表情。これが良い。

 その映像に感動するのは、しっかりしたストーリーありき。消費社会に対する批判も鼻につくものではなく、さり気なくて体いっぱいで純粋だ。これは感じる映画。途中で出会うウェインの言葉にあるとおり、頭でっかちになってはいけない。

 そして話が進むほどに思う。クリスの家族はよくこの映画化を了承したものだ、と。息子に出来るせめてものこと、と考えたのだろうか。ショーン・ペンの熱心な働きかけもあったろうが、本当にとても勇気ある行為だと思う。

 自由からの逃走ならぬ自由への逃走を果たすクリス。家族も財産も名前さえも捨ててアリノママただの人間として出発する。虚飾と欺瞞に満ちた社会に背を向け、嘘のない自然の中へ。決して裏切らない、そこにあるのは全てがアリノママ真実。そういう世界に身を置くことの安らぎ。だが、自然は優しくもないのだ。

 見上げる空に飛行機雲。何度か出てくるこの描写は、どんなに離れたつもりでいても文明の中に生きていることの、繋がっていることの証。空を飛ぶという偉業を成した人間の、不自然さと素晴らしさ。とても象徴的だ。

 人は一人では生きていけない。その意味を深く、限界を超えて深く感じた青年クリスの思いが痛い。クリスの旅と同時に語られる彼の家族の苦悩もまた心に痛い。
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俳優は誰?
 10年以上前に最初に映画化に取り掛かったとき、監督ショーン・ペンは主演にレオナルド・ディカプリオを考えていたのですって。わぁお!確かに若かりしレオ様はピッタリですね、この繊細な若者に。が、もう年をとり過ぎた。

 そんなわけで主演は『スピード・レーサー』エミール・ハーシュ。こんなにすごい俳優だったんですね!『スピード・レーサー』とは大違い過ぎて驚きまんた。体当たりで、真摯に役に没頭しているようで、ともかく素晴らしい。存在感があり、きらきらと命の輝きに満ちていて、あったかい人物になっていた。スタントもボディ・ダブルも一切使わず、というのも驚き。激流下りとかすごいよ。監督曰く、彼は全身から愛を発している、だそうで、うん確かにそうだ!今後も楽しみな俳優ですね!

 ナレーションが印象的な妹役にジェナ・マローン。子役時代なら『グッドナイト・ムーン』、思春期の可愛い女の子としては『海辺の家』が印象的だった。本作でも感受性の鋭い、抑圧された子を見事に演じているよ。

 両親に『インクレディブル・ハルク』の将軍ウィリアム・ハート『ミスティック・リバー』マーシャ・ゲイ・ハーデン。名優よね。 

 あと大好きなヴィンス・ヴォーンもワイルドないいヤツ、ウェイン役で登場。嬉しいのぅ嬉しいのぅ!DVD化が待たれる『クール・ドライ・プレイス』や、お馬鹿コメディ『ドッジボール』など、独特の存在感が素敵。

 驚いたのは『ザスーラ』で子役だったクリステン・スチュワート。お美しくなられましたな、姫!的。監督曰く、美人過ぎて最初は気が進まなかったけどその内面の輝きに気付いた、とのこと。ねー!美人過ぎる!私も彼女が出てきた場面で驚いた。こんな美人が出てくるなんて!って。美しさは時にハンディキャップ。いやぁ、素晴らしかったですよ。出番少ないけど印象的。

関連作品のようなもの
荒野へ (集英社文庫 ク 15-1)原作本。クリスの遺した日記や周囲への取材によって彼の足跡を辿ったもの。
荒野へ (集英社文庫 ク 15-1)
ジョン・クラカワー
オリジナル・サウンドトラック“イントゥ・ザ・ワイルド”サントラもかなり素晴らしい。アコースティック。曲はパール・ジャムのエディ・ヴェダー。
オリジナル・サウンドトラック“イントゥ・ザ・ワイルド”
エディ・ヴェダー
アラスカたんけん記 (たくさんのふしぎ傑作集)こちらはアラスカに魅せられた写真家・星野道夫。彼もまた大地に還った。
アラスカたんけん記 (たくさんのふしぎ傑作集)
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コメント


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白 | URL | 2008年11月15日(Sat)00:18 [EDIT]

TBありがとでした。
エミール・ハーシュの出演作、観たの3作目ですが、ようやく存在感たっぷりでした。マッハGoGoは誰がやってもそうだったかも知れませんけどね。

「1408」原作読んでみましたが、短いんですね。原作に忠実に… ってどこかに書いてたんですが、楽しみなような不安なような…「ホワイトナイツ」、ライオネル・リッチーのPVも映像使ってましたよね?ジャンプしてたような… 
鼻の中を焼くって、ホラー映画みたいな治療法があるんですね。想像しただけで嫌ですな~。

>白さま。

P | URL | 2008年11月15日(Sat)10:07 [EDIT]

スピードのほうが後なんですよね。きっと疲れててチャラい役やりたかったんでしょう。それでも今思えば、エミールの愛溢れるお顔のお陰でスピードにも温かさがあったように思えてきます。

1408原作、短いんですか。キューザック好きなので楽しみです。『狂っちゃいないぜ』的演技が観られそうです。
ホワイトナイツは曲ばかりが話題になってしまいましたが、実はダンス映画としても素晴らしいのです。そして脱出劇でもあり。大好き映画!

鼻腔ねー、焼いたほうが良いんだろうけど。怖すぎて。シャワー中にブーってくるとそれはそれでホラーなんですが。

ゴトひろ | URL | 2008年11月19日(Wed)23:22 [EDIT]

トラバあざッス。
原作を読んでも、彼に会った人々は口々に他の放浪者達とは違ったと言ってますね。
若さと言ってしまえばそれで終わりですが、色んな出会いがあってもそれを振り切ってアラスカに行ってしまう姿は彼の中の命題が実に大きかったのが感じられますね。
ショーン・ペンも監督として、大きな壁を越えたような気がします。

>ゴトひろさま。

P | URL | 2008年11月21日(Fri)13:19 [EDIT]

原作読んでないので映画で伝わってくることしかわかりませんけども。
人との絆ができても彼はなんていうか、人間から離れたかったんでしょうね。人は嘘をつくから。嘘と欲に塗れるのを心底嫌悪していたのだと思います。

TBありがとうございました

まる | URL | 2009年03月22日(Sun)21:32 [EDIT]

少し前の記事にコメ、失礼いたします

映像美、素晴らしかったですねぇ
自然がキレイだけど嘘っぽくなくて
匂いまで感じ取れそうでした
アラスカ、行ってみたいけど
彼のような旅は真似出来ないなぁ

>まるさま。

P | URL | 2009年03月23日(Mon)14:37 [EDIT]

自然な感じの映像美でしたよね~。そこにポツンといる彼がまた素晴らしかった。畏敬の念にうたれている感じが。

なかなかあんな風にすべてを捨てて旅することはできませんが、普通にトレッキングなんかに行きたくなりました。一人よりは誰かと一緒に。

エミールは熱演でした。

晴雨堂ミカエル | URL | 2009年09月10日(Thu)12:45 [EDIT]

こんにちは、映画ブログの晴雨堂です。
 
 ラストの場面や写真は辛いですね。

>晴雨堂ミカエルさま。

P | URL | 2009年09月10日(Thu)16:39 [EDIT]

ラストの写真なんかは、どっさりと心に重く響きました。
美しさと切なさと後悔。決して死にたがりではなかったはず。

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