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チェ 28歳の革命 【右手に銃 左手に理想 胸に愛】

tag 歴史 政治 戦争

『チェ 28歳の革命』 Che: Part One
2008年・アメリカ=フランス=スペイン
誰もが知ってる革命のアイコン、チェ・ゲバラの伝記2部作1つ目。

 エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ―アルゼンチンのサンタ・フェ州で裕福に育った若者が、医師となりハンセン病患者のために働こうとしていた若者が、革命の道に進んでからの話だ。

 “チェ”という愛称は、元々ゲバラの口癖でアルゼンチンの言葉で「やあ」とか「きみ」のような間投詞のこと。ゲバラは、挨拶だけでなく論議の場でも頻りに口にしていたという。それで周りのキューバ人がゲバラのことを“チェ”と呼ぶようになった。“チェ”という愛称は、外国人の証でもあるといえる。
   2作目はコチラ⇒チェ 39歳別れの手紙
チェ ダブルパック (「28歳の革命」&「39歳別れの手紙」) [DVD]チェ ダブルパック
(「28歳の革命」&「39歳別れの手紙」)

[DVD]
ベニチオ・デル・トロ
デミアン・ビチル

どんな映画?


 この映画はゲバラのひととなりを丁寧に描こうとする映画だ。だからキューバ革命についてや、革命の同志たちの厳しい3年間が詳らかにされているわけではない。そういった意味で、少しもそのあたりの知識がなく観ると、キューバ革命が順風満帆に行われたと誤解されそうではある。

まあ、アレもこれもと詰め込まずにゲバラという人物を浮き彫りにすることに専念したのは正解だと思う。散漫にならずに済んでいるから。そんなわけでカストロ兄弟や後に2番目の妻となるアレイダ・マルチ(金髪でガタイの良いイメージだったんだけど、映画では黒髪で小柄だった)なんかの描写はごく少ない。

 全体としてゲバラがどんな価値観で行動をしていたのかが伝わってくる映画だったと思う。ゲバラがスゴイのは、高邁な理想を抱き思索するだけでなく、それを実現する社会を作るために行動したところだ。映画『バットマン ビギンズ』の台詞に「人間、大事なのは中身じゃない。どう行動するかよ。」ってあったけど、それを地で行く感じ。そういえば、1960年の公衆衛生省研修過程開設式における医師の任務についての演説で、ゲバラが〆の言葉に選んだのは「言葉ではなく、行動で示せ」だった。

 邦題は“28歳の”と付いているけれど、実際はふたつの時代が交互に描かれている。ひとつは、メキシコ亡命中のカストロと出会い、キューバ革命に参加しバチスタ政権に勝利するまでの28歳~30歳の約3年間(1956~1959年1月)。このパートは鮮やかなカラー映像。草の根的行動の人ゲバラにとって、この戦争の間の記憶は政治家となってからの記憶よりもきっと鮮明だったことだろう。

もうひとつは35、6歳の政治家としての時代。1964年、アメリカABC放送の記者にインタビューを受けたり、国連総会で大国批判演説をする場面が粗いモノクロ映像で描かれる。それがドキュメンタリーっぽい効果もあり、ゲバラの行き詰まり感も表しているようにも思われた。ゲバラは世間的にエラくなってからもサトウキビの収穫を手伝いに行き、質素な暮らしを続け、寄付をし、金銭を軽蔑さえしていた。彼にとってはそれが当然だからだ。

 グァテマラ滞在中にまざまざと目にした北が南を搾取する構図に憤ったことが、ゲバラの革命家としての始まりだったと思う。ゆえに誰であろうと富める者が持たざる者を搾取するのを許さなかった。それが彼の社会主義であり、理想の社会の礎だから。映画の中でも農民の財産や少女の操、敵兵の派手なオープンカーを略取した者達を厳しく処罰する。ゲバラは血に塗れる道を選んだけれど、その高潔さ徳の高さが今でも英雄とされる所以だろう。

 ところで、ゲバラを演じたベニチオ・デル・トロさん、観る前は絶対ミスキャスト!って思ってた。デル・トロさんていつも眼光鋭いじゃないですかぁ~。目、細いし~。ゲバラといえば、あの包み込むようなあたたかい眼差しなんですよ、私にとっては!そこんとこが気にはなったんだけど、悪くなかったですよ。うん、大丈夫。一生懸命目を見開いてたっぽいし。
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充分に描かれなかった革命軍の2,3の事柄
 書きたいだけ書いていたらトンデモナイ長さになること請け合い。なので、映画の舞台キューバ革命についてサラっと書くよ。

 映画の中で頻りに“7月26日運動”と言われているのは、ゲバラがカストロ兄弟と出会う3年前の話。1953年7月26日にカストロ兄弟(リーダーのフィデルと弟のラウル)が学生達を率いてモンカダ兵舎を襲撃し、バチスタ政権に革命の意思表示を見せ付けたことだ。カストロはこのとき逮捕され禁固15年の刑を受けたけど、'55年に大赦で釈放されたのでメキシコに亡命した。こうして翌'56年に「キューバを解放するか死ぬかだ」という言葉どおりにキューバに上陸する。

 ここで敵バチスタについて少し。バチスタ自身、'52年にクーデターによって武力で政権を奪った独裁者。バチスタのクーデターを告発・糾弾したのが、当時弁護士だったフィデル・カストロだったというわけです。バチスタの何がそんなに憎らしいかっていうと、アメリカ迎合型の軍事独裁政権を敷いたから。勿論アメリカも言いなりになってくれるバチスタが好き。

アメリカのご機嫌を損ねたら国の経済が立ち行かないという状況自体をゲバラも厳しく批判していますが、自国の利益のために他国の政治に深く介入してくるアメリカという国。私利私欲のためにそれを受け入れる独裁者バチスタ。農地の地主はアメリカ資本の大企業。アメリカの植民地主義に、搾取される国民の不満は溜まります。キューバのものはキューバのもとに、民のものは民のもとに!農地解放運動が起こるのは必然といえたでしょう。このあたり、おそらく2部で描かれる失敗したボリビア革命との大きな差なのでしょう(ボリビアの農民は当時の政権にそれほどの不満はなかった)。

あら、長くなっちゃったわ。話をゲバラがキューバ上陸した'56年に戻しましょう。

 11月25日、グランマ号という小さな船は82人の同志を積んでキューバを目指した。が、大シケにあったりして最終的には目的地に到達する前にペリク河口にて座礁。出だしからゲンが悪い。12月2日、一行は水浸しになりながら漸う上陸を果たす。じめじめと3日間歩き続けて村に着いたとき、バチスタ軍の待ち伏せ攻撃を受けて決定的に敗北。革命軍は崩壊し散り散りになった。12月18日、シエラ・マエストラ山中の拠点にたどり着いたのはたったの12人だった。この生き残った12人がゲリラ部隊の中心となり、農民が次々と革命軍に参加することによって2年と少し後、1959年1月にバチスタ政権を倒したのだ。
 
関連作品のようなもの
The Voice of the Revolution映画にもでてきた国連総会でのスピーチ、アメリカ記者のインタビューなどを収録したCD。スペイン語ワカンネ。
The Voice of the Revolution
Che Guevara
モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)現代企画室出版のものの廉価版・文庫版。青春と思索の旅行記。
モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)
エルネスト・チェ ゲバラ
新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)ちょうど映画で描かれた時期の記録。コレたぶん未読。
新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)
チェ・ゲバラ
Introspective1曲目の歌詞にゲバラ登場。
Introspective
Pet Shop Boys

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コメント


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kino | URL | 2009年02月07日(Sat)10:29 [EDIT]

Pさん、TBありがとうございました。
ゲバラ知識のない私には、Pさんの記事、わかりやすい書かれてるので、参考になりましたよ。パンフに書かれてるものは、資料的か、批評家さん風なので、いまいち理解しにくい。
特に、56年キューバ上陸時のことは、触れられてなかったので、
へぇ~となりました。
淡々としてる映画なので、観るのしんどいですけど、
このつらさが、行軍みたいで、いいのかなとも思えます。
ゲバラといっしょに歩いて、何か感じるな、という映画で、観てよかったですね。

>kinoさま。

P | URL | 2009年02月07日(Sat)17:59 [EDIT]

ああ!パンフ買えば良かったです!今度買ってこようと思います。

参考になりましたら幸いです。なるべく単純に書いたので、全然不十分ですけども。最低でもこのくらい知っていれば映画が面白く感じるかなぁと思いまして。

私、薬飲んでから観たので眠くなって何度も欠伸しました。決してツマンナイわけじゃないんですけど!鮮やかなジャングルの緑が綺麗でした。些細なところにもゲバラの考え方とか人に対する思いとかが感じられて、とても緻密に作られてたなぁって思います。

umetraman | URL | 2009年02月09日(Mon)00:01 [EDIT]

こんばんは!

チェって名前じゃなかったんですか。口癖だったとは。「やあ」って挨拶の代りに使えるかな。チェ!チェ!・・・なに舌打ちしてんだコノヤロウと思われて終わりの予感。
チェ・ゲバラって他にも作品ありますよね。こんなに有名な人だったとは。もっと勉強しないとなあ(笑;)。

前からレンタル店でガエル・ガルシア・ベルナル版は見かけてたんですよ。これ借りてみるかなあ。

ガツンと応援~♪凸

>umeさま。

P | URL | 2009年02月09日(Mon)01:06 [EDIT]

アルゼンチンに旅行に行ってチェ!って使うべし!まぁ行かないな。

'69年に『ゲバラ!』っていう映画ありますね。オマー・シャリフ主演。未見ですが。なんか説明文にアドベンチャー映画とか書いてあるので観る気なくしました。

ガエルくんの、青春ロードムービーっぽくて良さげですよね。私も観たいです!本のほうは大変素晴らしかったですよ。

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