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チェ 39歳別れの手紙 【死してなお 語り続ける 魂の】

tag 歴史 政治 戦争

『チェ 39歳別れの手紙』 Che: Part Two
2008年・アメリカ=フランス=スペイン
ゲバラのゲリラ戦記2部作の2作目。ボリビア編。

 オッス!おら、ゲバラ!みんなの元気玉をわけてくれよな!って、そういう映画ではない。正直言って、これは映画としてはまったく面白くない類のものです。ゲバラの人物伝として、ある程度ゲバラに関する知識がある人が、その映像化を体感する楽しみ。ただ、それだけのものですよ。

 1作目はソレ単体でも、ゲバラ初心者でも、誰もが観てなんとなくわかった気になれる映画でした。革命の盛り上がり、膨らむ同士の数、大きなウネリが歴史となるその勝利の瞬間。そういった、映画的に描きやすいゲバラの華の部分だったからな。1作目がゲバラの生き様とすれば、2作目はゲバラの死に様だ。
  1作目キューバ革命編はコチラ⇒チェ 28歳の革命
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ベニチオ・デル・トロ
デミアン・ビチル

どんな映画?


 はて。邦題は“39歳別れの手紙”となっていますが、ゲバラは確かに享年39歳です。ただし、“別れの手紙”とされているのはゲバラがキューバを去る際にカストロに宛てた手紙のことで、この手紙が書かれたのは36歳のときのこと(1965年4月1日付け)。映画は、テレビ画面に映し出されるカストロが件の手紙を読み上げる場面から始まります。この発表は1965年10月3日の党中央委総会で行われたもの。

 そいうわけで、ゲバラがキューバに別れを告げた36歳からボリビアで処刑される39歳(1967年10月9日)までの話。もうね、のっけから悲壮感が漂ってるわけ。変装してボリビアに入国し、同士を集め、ジャングルの中に拠点を築く。政府軍との戦闘、激戦、捕縛され処刑される。それを淡々とただ語る映画。音楽も前作とは明らかに違い、とてももの悲しい。

 全編が悲壮感、疲弊、苛立ちに溢れているもんだから、観ているコチラはどんどん悲しくなっていく。これは元となる『ゲバラ日記』を読んでいるときの感覚と同じだ。日記は淡々と書かれていて、どこにいて何があったか、標高何mでどれほど行軍したか、誰が病気で動けないか、どんな処方をしたか、ラジオで何と言っていたか、そういったことが克明に書き残されている。実際、映画はこのゲバラの遺した日記に書かれている出来事を忠実に映像化している。日記の最後の日付は1967年10月7日。この翌日ゲリラ隊は政府軍の6個小隊に包囲され、負傷したゲバラは逮捕・移送され翌9日処刑された。

 ゲバラの行軍日記以外の部分も少ないながら描かれていた。工作員で連絡係のターニャが華やかなパーティーに参加しているところ(そうやって政界上層部の情報を集めてゲバラに書き送る)、カストロがゲバラを支援するための指示をしているところ(ここでカストロとゲバラを繋ぐ連絡係のフランス人レジス・ドブレが登場)、アメリカ政府が自国の利益のために共産主義を潰そうとボリビア政府に軍事的・金銭的援助を行うところ。こうやって時折挟まれる外界の状況が、少しはアクセントになって映画に僅かながらメリハリをつけている。
 
 ゲリラ軍敗北の大きな要因は、農民の支持を得られず密告が相次いだことにある。キューバ革命ではあんなに農民が協力的だったのに!なぜ!ってのは、おそらく農地改革が既に行われていたからだろう。今回の敵ボス―バリエントス大統領はバチスタ同様にクーデターを起こして成り上がり軍事独裁政権を敷いたわけだけど(1964年)、バリエントスの場合は農民に支持されていた(搾取される側であるインディオの言葉ケチュア語を話せたことが大きい)。農民は圧政と貧困に苦しんではいたものの、ある程度の不満は解消されていたし、武器を持って立ち上がるほどの怒りは持ち合わせていなかった。更にキューバ人の多いゲリラ軍は彼らにとって外国人部隊でありヨソ者。そのリーダーがアルゼンチン人且つキューバ人のゲバラであれば尚更、不信感しかもたないのだ。

 ゲバラは死んだ。でも映画のラスト・シーンは、グランマ号に乗ってキューバを目指す28歳のゲバラが映し出される。そこにはカストロもいる。ボリビアでのゲバラの戦いは負けに終わり、その肉体は滅しても、ゲバラの思想は死なない。そんなふうに感じられた。この後ボリビアは1982年まで軍事政権が続く。天然ガスや水などの資源に恵まれた国であるにもかかわらず、今でも中南米屈指の貧しい国である。

1作目と2作目の間のゲバラ
 1作目で描かれた1959年のキューバ革命勝利後、ゲバラ(このとき30歳)は新政府でキューバの経済的自立のために尽力した。他国との貿易交渉のため世界をうろつき、11月には国立銀行総裁に就任。ソ連などに大量に砂糖を輸出して国の経済を支えつつ、“農業国に甘んじていたら国際的立場の向上は望めない”との考えからキューバ工業化に取り組むんである。

 そうして1961年、工業省が新設されゲバラはその責任者となる。“より少ない砂糖、より多い工業化を”!こうして工業化4カ年計画を推し進めるのだった。が、これはうまくいかなかった。工業化は進まず、かえって人的・物的資源を工業化に費やしたがために農業の生産性は急激に落ちてしまった。たぶん、この工業化4カ年計画の失敗で随分疲れたろうゲバラ。1965年3月21日(このとき36歳)を最後に消息不明となるんである。

 その後、夏にはコンゴで反乱軍に加わったものの、あらゆる理由(アフリカという不慣れな土地と習慣、ゲリラ隊の腐敗、政治的背景など)から撤退。'66年3月極秘裏に短期間キューバに戻った(その一時帰国の様子は映画でも描かれていた)。そうしてボリビアでのゲリラ活動に身を投じることになる。映画の最初からゲバラがなんだか疲れているのは、そういった背景のためと考えられる。
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俳優は誰?
 さて、世間では不評らしいマット・デイモンのチラっと出演。私はまったく気にならなかった。マット・デイモンだな、とは思ったけど別にそれだけ。大体、私にはデル・トロがゲバラに見えていないのだから、他の役者がハリウッド臭をさせていたって全然気にならない。それどころか、マット・デイモンは巧い役者だからなるべく観客の注意を惹かないようにしているなぁって思ったよ。そういう意味では連絡係の紅一点ドイツ人のターニャ(ゲバラの恋人説、東独或いはソ連のスパイ説などがあるけど真相は薮の中)を演じたフランカ・ポテンテも同じで、しっかり映画に溶け込んでいた。でもって、この二人って『ボーン・アイデンティティ』コンビだね。

 あとルー・ダイアモンド・フィリップスがモンへ役で出演。あら、なんだか懐かしいお顔、と思いました。モンへはボリビア共産党第一書記で、ゲバラとは対立関係にあった。モンヘはカストロに圧力をかけられても頑としてゲリラ隊に協力しなかった。

関連作品のようなもの
ゲバラ日記 (角川文庫)淡々と綴られるボリビアでのゲリラ戦記。読み進むうちに鬱になる孤独な行軍記録。
ゲバラ日記 (角川文庫)
チェ ゲバラ
新版 ゲバラ最後の闘い―ボリビア革命の日々映画に出てくるフランス人ドブレの著書。
新版 ゲバラ最後の闘い―ボリビア革命の日々
レジス ドブレ
ゲバラ コンゴ戦記1965ボリビア入国前、コンゴで戦闘に参加した頃の話。
ゲバラ コンゴ戦記1965
パコ・イグナシオ,2 タイボフロイラン エスコバル
エバラ 横浜舶来亭 ハヤシフレーク 180g (3入り)エバラ 横浜舶来亭 ハヤシフレーク 180g (3入り)


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