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ダウト ~あるカトリック学校で~ 【見えぬもの 多分に真は そこに棲む】

tag サスペンス ミステリ ヒューマン

『ダウト ~あるカトリック学校で~』 Doubt
2008年・アメリカ
2004年の同名舞台劇をその脚本家ジョン・パトリック・シャンリーが監督・脚本を担当し映画化。

 舞台は1964年のニューヨーク・ブロンクスにあるカトリック学校。革新的で人望のあるフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)に“ある疑い”をもった、昔ながらの価値観を重んじる厳格な校長=シスター・アロイシアス(メリル・ストリープ)。二人の信念のぶつかり合いを緊張感たっぷりに描く。面白かった!ヽ(´ー`)ノ

 あのね、サブタイにカトリックとか入ってるし、確かにカトリック学校が舞台ですけども。だから宗教儀式も信仰心もしっかり描かれていますけども。これは宗教的な映画というよりは、人間心理についてのサスペンスですよ。だから宗教色濃そう~って敬遠するとモッタイナイさ。立場や考え方によって「正義」は違ってくる、また「疑い」がどんな行動を引き起こすのかって話だお。
ダウト ~あるカトリック学校で~ [DVD]ダウト
~あるカトリック学校で~ [DVD]

メリル・ストリープ
フィリップ・シーモア・ホフマン

コトノハ


"Doubt can be a bond as powerful and sustaining as certainty. When you are lost, you are not alone. "
(疑念は確信と同じほど強い絆たり得るのです。道を見失ったとき、あなたは一人ではないのだ。)

 フリン神父の説教は面白い。聴かせるし、アレゴリー(寓話)そのものだし。映画において最初の説教のテーマが疑念であり、これがストーリーの行く末を暗示する。果たして確信へと昇華した疑念は、真実を映しているだろうか?

どんな映画?
 どんなに確信をもっていても、それは感情でしかなく、疑念の余地があるものだ。この校長は確証もないままに執拗に疑念を持ち続け、それが確信に変わる。それはおそらく、神父の人柄への疑念と言えるんじゃないか。神父の行動を証明するものは何もない。“怪しい!”って直感と、かそけき状況証拠のみを頼りに糾弾する校長先生に、最初は多少ひいちゃうわね正直。

 この映画は、神父にかけられた疑いが事実か濡れ衣かをはっきりと証明することなく幕をひく。それがこの映画のキモだから。私たちは神父を有罪とするだろうか、無実とするだろうか。人は見えている事柄から自分なりに判断せざるを得ない。この映画は観客にそれを求めてくる。神父の善良さは、生徒と直接会話して導こう救おうとしている態度から明らかだ。一方で、彼の破戒僧チックな言動には引っかかりを覚える。人格者ではあるがどこか壊れていそうな印象(私にはそう見えた)。

 単純なストーリーではなく極めて複雑な、見る人によって解釈が異なる面白い映画だ。私の解釈もまとまりなく、一定の方向には向かわない。校長のロジックに巻き込まれて、神父をそのままに有罪と思い込むのも恐ろしい。それこそ何の証拠もなく噂に振り回される愚かな人の姿だからだ。かといって神父がまったくの無実だとしたら、彼の態度は非常におかしく映る。作中で語られない真実が横たわっているのが見えるが、その正体は判然としない。

 例えば神父は無実で、ただ人と性癖が違うだけかもしれない(ペドフィルではなくて同性愛なのでは?)。彼は表だってその性癖を明らかにはできないけど、それが悪いこととは思っていない。それが彼の在り方であり、愛なのだから。校長が糾弾したような事実はなく、本当に件の少年に親身になって相談にのっていただけかもしれないのだ。聖書に挟んだ押し花は神父の隠された愛の在り方の象徴のようにも見えた。

 また、神父の罪を匂わせるシーンも同じ位盛り込まれている。ロッカーにシャツを押し込んだ件、金髪少年ウィリアム・ロンドンの神父に対する態度や煙草、過去を掘り返されたときの狼狽え方などなど。加えて校長室の電球が2度突然消える。ライトは照らすもの、真実を明るみに出すものであり知識の象徴でもある。この2度とも、誰かが校長の態度に反感を露わにした途端に消えるのだ。灯りが消えることは即ち、何か校長から隠された事実があるということにはならないか。

 私が気になったのは、神父の爪だった。彼は生徒達に言う。「汚い爪は見たくない。私の爪は長めだけど、長いのが好きなのだ。でもごらん、清潔だ。清潔であれば良いのだ。」これは神父の価値観を明確に示していると思う。自分の好みを貫いて良い。それがクリーンならば。善き心から出たことならば。在り方ではなく性質(善なる性質)で判断せよということだ。厳格に規律を守ろうとする校長にとっては清潔だろうと不潔だろうと同じことで、長ければ「お切りなさい」と切り捨てる。

 斜めった映像や下から見上げる角度の映像などで、確かなことなど何もない不安定さをビシバシ煽る。そして神父の終わりの挨拶のときに、ウィリアム・ロンドンの顔が意味ありげに映される。本当の被害者は、もしかしたら…?また私の心に新たな疑念が芽生えた。明かされない真実に、点在する判断材料。鑑賞後にあれこれ考えるための映画は楽しい。
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俳優は誰?
 徹底的に疑惑を追求する校長先生はさすがのメリル・ストリープ。目が良いんだよな。目の動きが。それと僅かに歪ませた表情。厳格で、生徒に恐れられてこそ教育者であるという信念の持ち主を本当に厳めしく演じていた。だけでなく、同僚シスターを庇ったり、子供達を守りたい気持ちも表現され、複雑な人物像を完璧に体現していた。すごい迫力!それだけにラストの脆さが胸にズッシリくる。

 疑われる側、ナイスガイのフリン神父にフィリップ・シーモア・ホフマン。独特の存在感ある俳優さんですよね。脇を固めることが多いですが、本作では疑惑の的としてしっかり出ずっぱり。秘密めいたカリスマ性のある神父は、観る者を翻弄してくれて素晴らしかった。ホフマンが作家のトルーマン・カポーティを演じた『カポーティ』、まだ観てない!観たい!と思い続けてここまできた。

 忘れちゃいけないエイミー・アダムス。対立する二人のあいだに挟まれたシスタージェームズ役。つまり観客の目となる存在。主役二人が濃い演技派なので、彼女の透明感にちょっとホッとする。しかし純な真性天然ブリっ子やらせたらこの人の右に出る者はいないんじゃないか。エイミーが現実に転送されたプリンセスを演じるディズニーのコメディ映画『魔法にかけられて』は超おすすめ。

関連作品のようなもの
ダウト―疑いをめぐる寓話戯曲の単行本127㌻。
ダウト―疑いをめぐる寓話
ジョン・パトリック シャンリィ
スルース 【探偵】 [DVD]舞台劇の映画化、俳優の熱いバトルと共通項が多い映画。
スルース 【探偵】 [DVD]
マイケル・ケイン; ジュード・ロウ
ソフィーの選択 [VHS]DVD化が望まれるメリル・ストリープ主演映画。“ある選択”が一生忘れられない女性は本作とも通じるものがある。
ソフィーの選択 [VHS]
メリル・ストリープ; ケヴィン・クライン
ミセス・ダウト(特別編) [DVD]ミセス・ダウト(特別編) [DVD]
ロビン・ウィリアムズ; サリー・フィールド

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コメント


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umetraman | URL | 2009年03月14日(Sat)11:38 [EDIT]

こんにちは!

人間心理のサスペンスなんですか。色々と考えるところが多そうな作品なんですね。なんとなくですが「エミリーローズ」を思い出してしまいました。

また、メリル・ストリープVSフィリップ・シーモア・ホフマンてのが濃そうですよね。近寄ると危険みたいな。
エイミー・アダムスはどっかで聞いた名前だと思ってたら「魔法にかけられて」でしたか。あれは最高ですよぉ。あんな娘がいたら私ならウェルカムです。いつでも(笑)。
とにかくいい役者さん達ですね。

関係ないですが、竜巻映画の「ツイスター」にホフマンが出ていたのですね。後で知って驚きました。確認してみると、ああ~ホフマン能天気バージョンだわ、と思いました(笑)。

ガツンと応援♪凸

>umeさま。

P | URL | 2009年03月14日(Sat)18:56 [EDIT]

「エミリーローズ」観てないですがどうだろう。ちょっと観たいリストに追加しとこ。コチラは真実がどうか?何があったのか?ってテーマではなく、疑惑をもつことそのものに関しての映画でした。同時に、物事の二面性を提示してもいると思いました。エイミー・アダムスの役は純粋で優しく人を信じようとする心に満たされていましたが、反対から見るとそれは信じた方が楽だから、ことなかれ主義だからってことにもなる、と。

名優二人が対峙するシーンはすごい迫力でしたよ!すっかり画面に心奪われてました。息吸うの忘れる。

「ツイスター」に出てましたか。覚えてない・・・。あちこち出てますよね。メタボキューピーみたいな可愛げのあるナイス・ガイから、怪しげなヤツまで幅広い。本作ではどちらの彼も楽しめてお得です!

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□作品オフィシャルサイト 「ダウト ~あるカトリック学校で~」□監督・脚本・原作 ジョン・パトリック・シャンリー □キャスト メリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイヴィス■鑑賞日 3月8日(日)■劇場 チネ...

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