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スラムドッグ$ミリオネア 【負けはしない 彼女のためなら えんやこら】

tag ヒューマン 恋愛映画 犯罪 青春 動画付き

『スラムドッグ$ミリオネア』 SLUMDOG MILLIONAIRE
2008年・イギリス
インド、18歳の少年が挑む最大のクイズ・ショー。彼には金より大事な目的があった。

 日本でも『クイズ$ミリオネア』としてお馴染みの、英国発クイズ・ショー"Who wants to be a Millionaire?"のインド版を軸に進む映画。といっても、緊迫するクイズ・ショーについてのお話ではなく、少年ジャマールの人生と愛がクイズ・ショーと連動して語られるもの。この構成が巧かった。とりわけラストあたりの疾走感は気分が高揚して気持ち良い!

 序盤で子供時代のジャマールが糞まみれになって走って会いに行く人気スター=アミタブ・バッチャンは、インド版クイズ・ミリオネアで司会を務めていたことがあるそうですよ。
 動画⇒Kaun Banega Crorepati(インド版クイズ$ミリオネア: バッチャン司会)
それにしても、糞まみれ、ワロタ。
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コトノハ


"Bombay turned to Mumbai."
(ボンベイはムンバイになった。)

 感慨と共に語られる兄サリームの言葉。ボンベイがムンバイに名称変更されたのは1995年のことで、今でもインド映画界を表す言葉ボリウッドにも名残がある(ボはボンベイのボ)。'90年代のムンバイは国の政策によって急速な発展を遂げたが、映画の主人公兄弟の人生をその時期にピタリ重ねて、ごみごみしたスラム街が高層ビル立ち並ぶ経済都市に変わっていくさまを巧く見せている。

ただ、元々インドでは昔からムンバイの名称を使っていたのだから、この台詞には多少違和感を覚える。

どんな映画?
 一見、勢いがあってさわやかなエンタテイメント。初恋の人ラティカを探し続け、求め続ける少年ジャマールの純情な旅路。でも、そこにはインドの闇がギュっと押し込められている。決して深刻にならないように明るく語られ、子供目線で深くは描かないからシュガーコーティングされてはいるけど。

 スラムの描写はエネルギッシュでカラフルで、子供たちの可愛さもあって何とも明るい雰囲気だ。親なし子となった主人公兄弟は逞しく、生きるために富める者から奪う。無邪気な泥棒や詐欺から酷い犯罪までやってのけ、そのずる賢さについ笑ってしまう。

 クイズ番組の場面では、司会者のキッチュさが輝くダイヤのピアスに象徴されていた。彼はインド10億人の中でも一握りの富める者だ。この俗人キャラが、解答者ジャマールの純粋さと対比になって面白い。対比といえばジャマールの兄サリームが暴力と金と権力の虜になってしまうあたり、極めつけの兄弟対比にもなっている。兄さん、酷いや。どん引きだよ。でもラストはもっと抜け目なく立ち回ってのし上がって欲しかったよ。

 孤児を食い物にする大人達などなど、明確には描かれないがインドが抱える問題の数々にさらっと触れて映画は進行する。いささか表面的過ぎるようにも思うけど、主題はそこではないのだから仕方ないか。どの国にも闇はある。その中で生きていく。

 兄弟が母を亡くすエピソードもインドの闇のひとつ。映画では肌を青く塗って弓矢を携えた子供がでてきたが、あれはヒンドゥー教の聖典ラーマーヤナの主人公ラーマ王にコスプレしてるんである(ラーマ王はヴィシュヌ神の化身ともいわれ、ヒンドゥー教ではとても人気がある)。あのシーンは、イスラム教徒居住区にヒンドゥー教徒が殺戮に押しかけたところ。インドではヒンドゥー教とイスラム教の対立は何世紀も続いていて、報復に継ぐ報復で殺し合っている。2002年には2000人以上の死者を出した列車襲撃事件もあった。

※宗教別人口構成: ヒンドゥー教80.5%/イスラム教13.4%(2001年国勢調査)
参考資料⇒Population by religious communities(Census of Indiaより)

 国民の大多数がヒンドゥー教なわけで。イスラム教徒虐殺の暴動が起こっても、警察にヒンドゥー教徒が多いためにアクションを起こさないこともあるのだとか。油をかけられ生きながらに焼かれるイスラム教徒を笑って見ていた警察官もいたそうです。ゾっとするね。もちろんイスラム教徒だって報復するので、ヒンズー教徒が一方的に残虐なわけではありませんが。

 と、背景を詳しく見てくいくとかなり盛り沢山な映画ですのよ。そういった闇部分をアッケラカンと済ませているのは、エンタメとしては成功と言えましょう。そして、音楽も良かったです。終盤は特に盛り上がる!そしてエンドロールではインド映画っぽいカラフルな群舞が繰り広げられて楽しいでした。
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コメント


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kino | URL | 2009年05月16日(Sat)12:01 [EDIT]

実際の現状はよくわからないんですけど、画面的にも汚らしく撮られず、さらりとしてましたね。ごちゃごちゃしながらめまぐるしく発展するスピード感が、今のインドなんでしょうね。構成、画面とも、楽しく出来てるなぁと思いました。
やっぱり、最初の方の、うんち少年ジャマールの場面で、
観てる人の心はつかんだ!という感じはありました。

さすがPさん。

なるは | URL | 2009年05月16日(Sat)14:23 [EDIT]

私はシュガーコーティングに
満足してしまったタチです。

インドの背負う歴史とか環境とか、
テーマがちゃんと詰まっている作品でしたよね。
私はそこにすっかり重きを置き忘れてました…。

私はそうした中でも走りぬこうとする、
生命力の高い人間に感動しましたv-352
なんて前向きな作品なんだろう!
早くも今年一番名様な気がしてならないですv-398

>kinoさま。

P | URL | 2009年05月16日(Sat)22:04 [EDIT]

イギリス人監督がインドの闇を深く描いてしまったら、インドから反発があるでしょうから、そういう意味でああいう表現になったのかなぁとも思ったりします。

パワフル!エネルギッシュ!躍動感!て感じのインドの雰囲気がなんか圧倒的でしたね~。本当に楽しかったです。

うんち少年のエピソードがその後のラティカのエピソードと重なるっていう構成も巧かったですよね。大事なモノは糞まみれになってでも手に入れる!でもそれを兄ちゃんが奪って売っちゃう。みたいな。グっと心を掴まれましたね、うんちに!

>なるはさま。

P | URL | 2009年05月16日(Sat)22:11 [EDIT]

大事なのはジャマールの諦めずに求め続ける姿勢だと思うので、それで良いんだと思います。
社会的背景はメインテーマではありませんのものね。

そうそう、本当に逞しく生きていく子供達にグっときました!
現実を精一杯生きていくしかない、一日一日を生き抜くしかない、そんな状況でも笑って過ごす。私達日本人が時に忘れがちな思いが、そこにありましたね。

こんにちは

まりっぺ | URL | 2009年05月17日(Sun)11:10 [EDIT]

闇の中の希望や夢といった感じでしたね。

>まりっぺさま。

P | URL | 2009年05月17日(Sun)14:18 [EDIT]

そうですね!

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