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グラン・トリノ 【憎しみは 知れば知るほど 薄れゆく】

tag ヒューマン 犯罪

『グラン・トリノ』 GRAN TORINO
2008年・アメリカ=オーストラリア
クリント・イーストウッド監督・主演のヒューマン・ドラマ。

 グラン・トリノは1972年のフォード社の車。えっらいカッコイイフォルム。リアの流線ぷりがたまらん。(*´Д`*)とにかく美しいフォルムは走るクラシック。まあ、性能は別問題ね。アメ車だもん。フォードだもん。

 そんな古き善きグラン・トリノをキーアイテムにして、一人の老人と彼の差別対象だったアジア人との交流を描く。レイシズムを問題としている割には、もっと個人的でささやかな物語。劇中のイーストウッド爺ちゃんの飼い犬の名前はデイジーで、『ドライビングMissデイジー』を思い起こす。

 イーストウッドは話を壮大にしないで人間を細やかに描くよね。いつも主題がはっきりしている。その分、細かいところまで気が回らないというか、結構いい加減なところもあるんだけど。たぶん全てに力をいれて撮ったら予算が足りないのだろうな。

ギャングの一人の胸のタトゥーは“家庭”。ギャングなのに温もり溢れるタトゥーよね。
グラン・トリノ [Blu-ray]グラン・トリノ [Blu-ray]
クリント・イーストウッド
ビー・バン

コトノハ


"You don't want to know."
(知らない方が良い)

 朝鮮戦争で人を殺したとき、どんな感じだった?と少年に聞かれての答え。爺ちゃんが一生背負ってきたもの、囚われてきたもの。それは戦争の記憶であり、人殺しの記憶。この罪を償うにはどうしたら良いのか?爺ちゃんはこのことについて懺悔をしません。なぜなら、許されるべきでない罪だから。荷を下ろして軽い気持ちになるべきではないから。

どんな映画?
 爺ちゃんのお隣さんはモン族の一家。朝鮮戦争以来アジア人を憎んでいる爺ちゃんにとっては、関わり合いになりたくないヤツらだった。そのお隣の姉弟と、ひょんなことから近づきになる爺ちゃん。彼らのことを知ると、その伝統や義理堅さ、感謝を忘れないところなどに親近感を覚える。それは最近のアメリカ人が忘れていることで、爺ちゃんは苦々しい気持ちでいたから。
(モン族については映画中で説明があるので割愛。日本ではミャオ族とも呼ばれる民族だよ。)

 モン族の姉弟に絡んでくるロクデナシの従兄弟たちは若いギャングで、そいつらを追い払った爺ちゃんはモン族のヒーロー扱いされる。感謝されることに戸惑う老人が可笑しい。テーマは重いのに、ユーモアがたっぷり差し挟まっていて笑ってしまう。苦虫を噛み潰したような爺ちゃんの顔や、息子に老人ホームを勧められて爆発寸前の唸り、モン・フードの美味しさに満面の笑みを浮かべるところ、行きつけの床屋で罵り合うところなどなど。捻くれた面白さ。

 爺ちゃんが少年にグラン・トリノを「デートに使えよ」って言うシーンが好き。彼にとって唯一の宝であるグラン・トリノを任せても良いと思ったんだもん。万事に控えめで、生き方に迷った少年に。爺ちゃんと少年の二人が出会ってお互いに変化していく様が心地よい縦軸。

 でも最後のシーンはなぜ急に夜になっていたのかわからない。爺ちゃんが家を出たのはせいぜい16時半。そのあと姉ちゃんに電話して少年が家を出たときはまだ外は明るかった。少年は明らかに爺ちゃんを追いかけていた。で、突然爺ちゃんの場面が真っ暗の夜。

たぶん、撮影時間が押したとか夜の方が雰囲気出るとかそういった理由なんだろう。こういう抜け作なところがイーストウッドなので、もう正直諦めている。細かく見たら、グラスのビールの水面が上がったり下がったりしてるし、手に持っていた帽子が次の瞬間消えていたりするし。イーストウッドはそういうの気にしないよね。主題が語れれば良いってタイプ。

 なんにしろ、細かい部分は置いといて。姉ちゃんに降りかかった悲劇のモトは自分にあることを自覚し、その責任をとった爺ちゃん。世界で繰り返される戦争やテロにちょっかいだけ出して責任とらない国に対する示しなのか。責任を果たすと同時に、自らの心の十字架を下ろすことにもなった。せめてものクリーンな償いをすることができて。爺ちゃんは十字架を下ろし、十字架になった。
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チェンジリング [DVD]イーストウッド監督のヒューマン・ドラマ。これも良かった。
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アンジェリーナ・ジョリー; ジョン・マルコヴィッチ
ドライビングMissデイジー デラックス版 [DVD]テーマは同じ映画。そして『グラン・トリノ』の飼い犬の名前がデイジー。
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ジェシカ・タンディ; モーガン・フリーマン
チョコレート [DVD]レイシストが変化する映画といえばこれ。息子をヒース・レジャーが演じてたね。
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すたん | URL | 2010年03月30日(Tue)15:40 [EDIT]

この映画は私を10年振りに映画の世界に引き戻してくれました。

色々なメッセージ、今日の世界情勢を盛り込んだ作品ではありますが、なによりも言葉では言い表せない感動を与えてくれました。

個人的にはコワルスキー爺さんがタオ少年に仕事を与え、煙草を吸いながらその光景を見守っているシーンが好きです。

>すたんさま。

P | URL | 2010年03月30日(Tue)16:06 [EDIT]

なんとも“映画の良さ”の詰まった作品でしたね。
床屋のシーンも良かったです。悪のりする二人の爺さんの笑顔と少年のふれあいが。

爺さんの表情がなんともいえない素敵さで、イーストウッドの俳優引退は勿体ない気がしました。

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