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ラブリーボーン 【愛すべき 絆を強く 時間かけ】

tag 犯罪 青春 ヒューマン ファンタジー サスペンス

『ラブリーボーン』 THE LOVELY BONES
2009年・アメリカ=イギリス=ニュージーランド
アリス・シーボルドの同名小説をピーター・ジャクソン監督が映画化。

 原作は2002年発表のものでアリス・シーボルドの処女小説。その前に、シーボルド本人がレイプの犠牲者となった体験とそのトラウマの克服を綴ったノンフィクション『ラッキー』を出している。そんな著者だからこそ書けたであろう、悲劇と長い時間をかけての再生の物語がこの『ラブリー・ボーン』なわけだ。これは映画を観た人にも観ていない人にもお勧めしたい、感動の小説。
読書感想文⇒『ラブリーボーン』読んだ。 (猫の毛玉)

 さて、映画版。映像は美しく、俳優陣は皆完璧。ナレーションで話が進むにもかかわらず説明的過ぎず、示唆に富む映像表現で伝わる作りも良かった。原作と比べると心理描写が明らかに不足していて、人間関係も単純化されているのが仕方ないとはいえ残念。うまく映画としてまとめたな、と思う。
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マーク・ウォールバーグ
レイチェル・ワイズ

コトノハ


"He ruined a lot of things."
(彼はあらゆることを台無しにした。)

 この台詞はスージーのナレーションから。この場面の映像は自転車に乗ってぐるぐる回るスージーが、犯人(スタンリー・トゥッチ)と話す両親に笑いかけながら写真を撮っているところ。ちょうどこのナレーションが終わるタイミングで両親が「何の写真を撮るの?」と問い、スージーが楽しそうに"Everything!"(何もかもよ!)と答えるのが切ない。彼はその何もかもを台無しにしたんだから。

どんな映画?
 1973年12月6日、スージー・サーモンは殺された。14歳で、初めてのデートの約束を交わしたばかりだった。学校から家まで、近道のコーン畑を通ったら、そこで近所に住むオジサンに声をかけられた。それが全ての不幸の始まり。スージーだけでなく、遺された家族にとっても。

 原作のストーリーを割と忠実になぞっていく映画版(幾つか変更点もあるけど)。でも、2時間ちょっとの映画にするには、あまりにも複雑重厚な物語。そこで原作から横道部分を思い切って削ぎ落とし、あらゆる人物の心理描写も人間関係もばっさりカットしてあるよ。だから映画だけ観るととても薄っぺらく見えてしまう。

 ギュギュっとスージーと父親(マーキー・マイク)にフォーカスを絞っているのは2時間枠に収めるための智慧。残念だったのは母親アビゲイル(レイチェル・ワイズ)の家族への思い、葛藤がほとんど描かれていないこと。原作では、割とそこがキモだったと思うのだが。それに妹リンジーの心情も、レイやルース、レイの家族、刑事、犯人の思いも薄すぎた。

 映画単体で観ると、スピリチュアル方面に偏りすぎた嫌いがあるなぁ。遺された家族の再生という主題がブレちゃった気がする。それでも映像は美麗だし、暗い背景事情も淡々と描いているし、スージーの心境・葛藤も伝わってきた。普通に良い映画だと思う。

思うにピーター・ジャクソンは小説を映画という媒体に移植するのは得意なんだな。完成品は原作読者でないと深みを見いだせないけれど、忠実な描写とまとめ力は優れている。指輪物語もそうだった。

 原作を読んでから観ると、小物(スノードーム、ブレスレットなど)や服装から人物描写まで驚くほどそのまま再現されているのがわかる仕様。ただ、カットされてるだけなんだ。映画には描かれなかったエピソードが原作には山盛りあるので、映画版に不満を感じたら是非読んでみてほしいです。読後の感動は、映画版では味わえないものがありました!

 犯人の行く末については、原作の哲学を尊重して欲しかった!なぜなら序盤でスージーの祖母(スーザン・サランドン)が言う「お前は弟の命を救ったんだから、幸せに長生きするよ」を皮肉に引用する(事実はそうはならなかった)因果応報の否定と噛みあわなくなっちゃったから。人は誰でもいつか死ぬ、どんな死に方だろうと死ぬ。そのスタンスを崩してしまっているから居心地悪く感じてしまう。

試写で「(犯人への)バイオレンスが足りない」と言われた監督が、犯人のエピソードを追加撮影したとか。ピーター、迎合し過ぎだろ。あの取って付けたようなシーンだけが浮いているのは、そういうワケなんだろう。(元の映像は崖の上の出来事だけで終わっていたようです)

 わかりにくかったのが、年月の流れ。原作では結局10年ほどの年月が過ぎているけれど、映画版ではどうだったのか?映画内時間は、スージーが死んでから少なくとも3年ちょっと(11ヶ月後の字幕、そのあとフィルムの現像を月1本x24で2年)は経過している様子。妹が中学を卒業し高校に進学した描写もあったしな。ラストに“その後の登場人物たち”って感じで少し映像が入るけど、あそこを除いて考えた場合3~4年ぐらいかな。

《自分メモ》
・スージーが死後の世界で仲良くなる少女は、ホリー・ゴライトリーと名乗る。『ティファニーで朝食を』のヒロインの名前だよ。あれも映画より原作小説の方が話が面白かった。映画には映画の良さがあるけど。
・レイ・シンの読んでいる本は、映画『エターナル・サンシャイン』のタイトルに引用された『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』
・オセローがミントみたい、と言われているのはニュージーランドの定番ミント・キャンディのブランドOddfellowsに発音が似ているから。
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俳優は誰?
 役者陣が端から端まで素晴らしい!そんな中でも殺される少女スージー・サーモンを演じるシアーシャ・ローナンは最高でした。今度は"Hanna"で主役の少女アサシンを演じることが決まっているので楽しみ。共演はエリック・バナ、ケイト・ブランシェットですって。

 母親役レイチェル・ワイズ、祖母役スーザン・サランドンと名優を揃えておきながらの無駄遣い。二人とも原作のイメージぴったりで、もっと複雑な人物のはずなんだけど、ばっさりカットされたね!ああ勿体ない!特にワイズ!本人だってきっと「あれ?」って思ってるはず!

 不気味なペド、犯人をスタンリー・トゥッチが作り込んで披露。さすがの気持ち悪さ!これに原作で描かれた精神的に可哀想な感じが表現されてたら完璧だったな。あ、それはトゥッチのせいじゃない、ピーターのせいだ。単なる悪人として描いてしまったのは、ある意味仕方ないとは思う。こみ上げる情欲を抑えようとし、気を逸らそうとし、でも結局犯罪を繰り返してしまうあの哀しさがあるからこそ、原作には感動があった。

関連作品のようなもの
ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス)原作本。私の読んだ版と訳者が違うので、きっと読みやすくなってるはず!
ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス)
アリス ・シーボルド
ティファニーで朝食を (新潮文庫)スージーが出会う少女はホリー・ゴライトリーと名乗る。小説のヒロインの名前。
ティファニーで朝食を (新潮文庫)
カポーティ
ラッキーレイプ体験とそのトラウマ克服を綴ったノンフィクション。
ラッキー
アリス シーボルド
オルモスト・ムーン 月が欠けゆく夜シーボルドの新作。母親の介護を20年間続け、究極の選択をしてから24時間の物語。
オルモスト・ムーン 月が欠けゆく夜
アリス シーボルド

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