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Dr.パルナサスの鏡 【語り部に 紡がれる世の 終わりなき】

tag ファンタジー ミステリ コスチューム

『Dr.パルナサスの鏡』 THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS
2009年・イギリス=カナダ=フランス
テリー・ギリアム監督のイマジネーション・コメディ。

 ギリアムといえばモンティ・パイソンであり、やはり『クリムゾン 老人は荒野をめざす』(『モンティ・パイソン/人生狂騒曲』の冒頭部16分間の短編)でしょう。あの頃とは比較にならない映像表現が可能になった今日、ギリアムはどんな世界を見せてくれるのか?

 この映画はとてもギリアムらしい映画!『未来世紀ブラジル』の皮肉とユーモア、『バロン』の不条理さと人間性、そして哀しみや孤独や偽善や欲望、醜さ…様々な要素がひとつの物語を彩っているよ。

 勿論、撮影中に亡くなったヒース・レジャーの代役を3人の個性派俳優が務めたのも素晴らしい話。脚本変更などなど苦労したろうけども、よく最後まで撮りあげたなぁ、うまく完成させたものだなぁと思いながら観ると感激しちゃいます。この調子で『ドンキホーテを殺した男』も完成しますように~。<無理。(ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』参照)
Dr.パルナサスの鏡 [Blu-ray]Dr.パルナサスの鏡 [Blu-ray]
クリストファー・プラマー
ヒース・レジャー

コトノハ


"Nothing is permanent, not even death."
(永久不変なものなどないのです、死でさえも。)

 トニー(ジョニデ版)の言葉。決められた運命などない、死すべき運命などない。だからパルナサス爺さんの娘を悪魔の手から守ることもできるはず!すわっ!みたいな?トニーが喋るどの台詞もつるつるとリズム良く出てくるのが凄い。芝居がかった物言いが印象的。なぜそうなのかは最後にわかる仕掛け。

どんな映画?
 原題は“パルナサス博士の幻想館”みたいな感じか。イマジナリウムは、つまりイマジネーション(想像)の館の意。どこまでがパルナサスの頭の中での出来事なのか、どこまでが現実なのか。その境界は極めて曖昧なまま。まさに観る者の解釈次第で幾通りもの『Dr.パルナサスの鏡』が存在する、そんな映画。ゆえに明確な筋書きやオチを期待する向きには酷評されるタイプ。

 とはいえ。ギリアムにしては話の筋書きがしっかり提示されているし、謎の男トニーや悪魔のニック氏などの物語もわかりやすいのね。一見。これが考えれば考えるほど話そのものが曖昧になってくる不思議さ。やっぱりギリアムらしい、すべてが夢のような物語。そしてその不可解さこそが魅力。

 2007年ロンドンが舞台。旅芸人一座を率いるパルナサス博士はなんと千年も生きている。悪魔との賭に勝って不滅の肉体を得たからだ。彼の娘ヴァレンティナ(リリー・コール)は、16歳の誕生日に悪魔に魂を持って行かれる約束になっているのだが…。

 コメディ要素でぶっちぎりに笑ったのは鏡の中のトニーその2(ジュード・ロウ)部分の突如警官が現れるシーン。「魚を探せ」を思い出した。どうしようあれがちょうど映画の中間地点だったら。あと、パルナサス親娘がなぜかボクシングの真似事を度々やるのが面白かった。怖いよ、ヴァレンティナ。

 映画全体を通して、音の浮遊感が素晴らしかった!これはぜひ良い音響設備の整った劇場で観るべき。ラストもラストで携帯電話の音が鳴ってビビったのも今は良い思い出。家ではなく映画館で見続けたい映画なのでリバイバルがんがん上映されると良いなぁ。

 物語はパルナサス(クリストファー・プラマー)と悪魔のニック氏(トム・ウェイツ)の関係を中心に据えて描いていく。ニック氏は悪魔なんだか神なんだかって感じの不明確な存在感で、ただパルナサスとゲームをするのを楽しんでいる雰囲気。苦悩するパルナサスを見るのが好きな変態さんともいう。

 ラストでパルナサスは人形劇を操っている。ニックとの賭けで人の魂をゲームの道具に使ってきた彼が、人の人生を弄ぶのは人形劇の中だけにしようと更正したような印象を受けた。その前のシーン、砂漠の終わりの道にhighとLowの標識があったのが裏付け。“天国と地獄”的意味合いでありつつもHigh and Lowといえば簡単な賭けごとだから。そこで彼はどちらも選ばずにギャンブラー卒業!をするのだ。負け続けてる哀しいギャンブラー♪

 小人のパーシーはパルナサスの一部というか分身なのかな。パルナサスのことは何でも知っているし、1000年一緒に生きてるし、「お前がいなければどうしようもない」と言われるのだから。

 パルナサスはニック氏と出会ったとき、「物語が語られているから世界は存在する」と信仰を告白する。これはどこか量子宇宙論とか情報宇宙論に通じているように感じたよ。まずグレッグ・イーガンの『万物理論』を思い出した。つまり主観的宇宙論。今観ているこの世界に、こう在れと命じているのは誰か。宇宙の在り方は考え方次第で変わるのではないか。この映画では“物語をやめたとき、世界は消失するのではないか”となる。エンデの『はてしない物語』も同じで、ファンタージェンが消えそうなのは物語が語られなくなってきたからだよね。

 そう考えてくると、パルナサスが人の夢や欲望をマテリアライズする鏡の世界を持っていることは不思議でなくなる。鏡の中に閉じた主観的宇宙が、その人間の考えた情報を実体化させるのだから。

 首に縄かけた姿や悪魔の姿恰好、1本の木しかない荒地など、戯曲『ゴドーを待ちながら』へのオマージュが散見される。そこからも、この映画は物語(生)の永続性や循環を主張しているように思う。永遠の命、続く世界、脈々と継がれる人の営み。生きているうちは物語が続くし、死んでも誰かがその物語を受け継いでいく。ヒースが死んでも、話は続くのだ。彼を思う人が生きて引き継ぐから。そうやって人類はここまできた。
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俳優は誰?
 トニー役のヒースやパルナサス役のプラマーなどなど割愛。

 いかがわしい男をやらせたら天下一品のコリン・ファレル。今回は『フォーン・ブース』風味。彼は写真で見たらなんてことないんだけど、スクリーンの中で動くと途端に魅力的なのよね。下がり眉ー(´・ω・`)。

 ヴァレンティナを演じたリリー・コールは油絵の中から抜けだしたようなお顔立ち。決して正当派美人ではなく、個性の強い独特な容貌が魅力的よね。映画の雰囲気にとても合っていた!

関連作品のようなもの
ゴドーを待ちながら (ベスト・オブ・ベケット)戯曲「ゴドーを待ちながら」への目配せがあちこちに。
ゴドーを待ちながら (ベスト・オブ・ベケット)
サミュエル ベケット
モンティ・パイソン/人生狂騒曲 【ベスト・ライブラリー 1500円:第3弾】 [DVD]随所にこの映画を彷彿とさせる描写が!
モンティ・パイソン/人生狂騒曲 [DVD]
テリー・ジョーンズ; ジョン・クリーズ
バロン [DVD]ギリアムの中でももっとバロンぽい映画だと思ってた。
バロン [DVD]
ジョン・ネビルサラ・ポーリー

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コメント


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こんにちは!

なるは | URL | 2010年02月27日(Sat)17:16 [EDIT]

>いかがわしい男をやらせたら天下一品のコリン・ファレル

まったくもって(*^_^*)
あそこまでヒロインを突き飛ばすとは。
おもしろい役でした!
動いてる方が、コリンは素敵ですよね。
下がり眉ー(´・ω・`)


コトノハのセリフは、
トニー(ジョニー・デップ)のセリフじゃなかったですっけ…?
(オリジナル予告がそうだったような…。)

>なるはさま。

P | URL | 2010年02月28日(Sun)20:19 [EDIT]

下がり眉ー(´・ω・`)

映画の中で見るまでは特に素敵だとは思ってなかったです。コリンたん。
プライベートがやんちゃとかそんなイメージしか。
最初に見たの、『フォーンブース』だったかしら。えらい格好いいな!と。

ジョニー・トニーの台詞でしたけか!
間違えちゃった!ありがとうございます。

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