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インビクタス/負けざる者たち 【復讐は 何も産まぬが 赦しこそ】

tag ヒューマン スポーツ 政治 歴史 動画付き

『インビクタス/負けざる者たち』 INVICTUS
2009年・アメリカ
南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領伝記映画。

 マンデラさんといえば名高き反アパルトヘイト(人種隔離政策)の騎士。マンデラさんについて映画を作ろうとしたら、何時間あっても足りないような生ける伝説。それをクリント・イーストウッドはうまく纏めた!といっても原作本はあるんです。ジャーナリストのジョン・カーリンがマンデラさんの全面的協力を受けて書き上げたノンフィクション『インビクタス~負けざる者たち』(原題"Playing the Enemy: Nelson Mandela and the Game That Made a Nation")がソレ。

 映画は1995年のラグビー・ワールドカップを巡るマンデラさんの暗躍にフォーカスをあて、枝葉は思い切って削ぎ落としたシンプルなドラマとなっています。

 オラ、ラグビーとアメフトの違いわっかんねぇな!と悟空が言ったかどうかはわかりませんが、私は違いのわからない女。知らなくても映画は楽しめます。ニュージーランドに住んだことあるからオールブラックス(世界的に人気のあるニュージーランドの最強ラグビーチーム)はよく存じ上げておりますよ。カマテカマテ!(ka mate=死)カオラカオラ!(ka ora=生)

 タイトルは"invincible"(=無敵の、揺るぎない)のラテン語形。映画で描かれるとおり、19世紀英国の詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの短い詩の題。詩人ヘンリーは12歳の頃病魔に冒され左足の膝下を切断する悲劇にあいました。子供が片足を無くし、皆と遊べなくなるのはどれほどの孤独だったろう。

※詩"Invictus"原文はコチラ⇒Invictus (ポエムハンター)

 当ブログでも『チェンジリング』『グラン・トリノ』『ミリオンダラー・ベイビー』と書いてきたイーストウッド監督作。どこか冷徹なカメラワークと、語りすぎない演出と、言いたいこと以外には重きを置かないシンプルさが好きです。毎回違ったテーマ(信念、贖罪と救済、尊厳死など)をグサリと抉るように描くスタイルも好きです。次回作はマット・デイモン主演のスーパーナチュラル・スリラー"Hereafter"2010年12月に米国公開予定!何でも死者とコミュニケーションできる男の話らしいよ。
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モーガン・フリーマン
マット・デイモン

コトノハ


"Forgiveness liberates the soul."
(赦しが魂を解放するのだ)

 マンデラさん(モーガン・フリーマン)の印象的な台詞。まさにこの言葉に尽きる。復讐したり、憎んでも何も始まらない。相手を赦し、相手と同じ過ちは犯さないようにする。こう言葉にするのは容易いけれど、現実にこんな高潔な態度を貫くことは極めて困難だろう。だからこそ、マンデラさんは世界で尊敬されているのだよね。

どんな映画?
 決して偉そうぶったりせず、誰にであれ礼を尽くす。徳の高い人というのは、まさしくマンデラさんのこと。徳の権化!そんなマンデラさんの簡単な経歴はこんな感じ。
・1918年7月生まれ(現在91歳)
・1962年:ストライキを扇動したとして逮捕されヨハネスブルクで拘束された。
・1964年:終身刑を言い渡され投獄される。
 (18年間をロベン島の刑務所で過ごす)
・1982年:ポルスモア刑務所に移送される。
・1988年:ビクター・フェルスター刑務所に移送される。
・1990年11月:釈放。
・1994~1999年:南アフリカ共和国大統領を務める
 (当時75歳~80歳)

 映画はマンデラさんの高潔でおおらかで理念をもった、加えてお茶目で気さくな人物像を魅力的に描いていました。とりわけ朝の散歩でボディガードに家族のことを訊かれるシーンは、孤独な人間としての面を見せてくれる。更に人に慕われている描写も素敵でした。

 マンデラさんのご指名もあって演じるのはモーガン・フリーマン。人徳の滲み出る、愛嬌たっぷりの人物像を完璧に表現しました。『ドリームキャッチャー』とか悪役もやることあるけど、そういうときの表情は全然違うよね。

 イーストウッド監督なのでセンチメンタリズムはとことん抑えた演出。普通なら過剰に盛り上げるであろう場面でも、さらっと済ます。それが逆に胸に残る。主将(マット・デイモン)がマンデラさんの収監されていた牢獄を訪れ、思いを巡らすところなんか素晴らしい。

 ワールドカップ開会のときに選手達が歌う国家にグっとくる!こんな歌意味ワカンナイ!って丸めて捨てたあの歌を歌ってくれるんですから。多くを語らない演出がまた良いですよ。マンデラさんのお人柄に触れて考え直したのか、主将の思いが選手達にも理解できたからなのか。その両方なのか。もう自分達はただのラグビー選手ではない、国を一つにするアイコンとしての行動が求められているのだ。あのシーンまでの経緯を想像すると熱くなる!

 音楽はアフリカの民族音楽っぽい感じの曲がたくさん使われていました。moonでいったら『父よ私に神の力をください』(アマゾン南西部、イナウイ河岸の住民)テイスト。え、例えがわかりにくいって?知らない!

 後半、ワールドカップの最後の試合はいつになく入り込んだカメラワークで臨場感がありました。スローに響く音、歓声は遠くひき、息づかいは鼓膜を大きく震わす。この没入感は凄い。それまでの距離を保った冷静な描写から、一気に試合の中に引き込まれるコントラスト。

 このドラマチックな試合が、事実に基づいていることもまた驚きだよね。試合運びは実際あんな感じだったとのことで、飛行機(747機)のシーンも実際の出来事だそうですよ。凄かったね!ハラハラした!
※実際の映像⇒Rugby Worldcup Flyover (youtube)

 オールブラックスの舞ったハカについて。私が実際に観たハカは、もうちょっと怖かったです。目を剥いて思い切り舌を出すポーズが超怖いの。舌、抜けるよ。ってぐらい凄い顔になるの。目の前でやられるとね、本当( ゚д゚ )ポカーンてなるよ。威圧される!そりゃあ戦いの踊りだからね。ハカした方の士気はうなぎ登り、こっちは士気がダダ下がりするってば。いわばメンタル攻撃。

 ラストに溢れる多幸感。もちろん、これで虹の国に成ったわけではない。ラグビーは手掛かりであり、始めの一歩だから。アパルトヘイト的精神やそれに対する憎しみは簡単には消えない。今もなお苦しんでいるのは事実だ。長らくの習慣は体に染みついているものだから、まずは子供達の教育と、大人の意識改革を繰り返し続けねばならない。単純ではないけれど、スポーツや音楽や芸術は意識改革に大きく貢献すると信じる。人間的な心丸ごとをもって表現するからだろうか。

 音楽でいえばマイケル・ジャクソンはまさに世界を変えようとした。その姿は映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』でうかがい知れる。音楽が人の精神に及ぼす影響力を信じていたから、あそこまで限界を超えるパフォーマンスをもって表現していた。
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関連作品のようなもの
インビクタス~負けざる者たち原作本。ジャーナリストがマンデラの全面的支持を得て書いたノンフィクション。
インビクタス~負けざる者たち
ジョン カーリン
「インビクタス/負けざる者たち」オリジナル・サウンドトラック南アフリカ共和国国家も収録されたサントラ。アフリカンな曲素敵。
「インビクタス/負けざる者たち」オリジナル・サウンドトラック
サントラ
マンデラの名もなき看守 [DVD]投獄時代はこちらの映画で。
マンデラの名もなき看守 [DVD]
ジョセフ・ファインズ; デニス・ヘイスバート
南アフリカ 「虹の国」への歩み (岩波新書)映画にも出てくる「虹の国」の意味。南アフリカの歴史を知ることが出来る。
南アフリカ 「虹の国」への歩み (岩波新書)
峯 陽一

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hiromi | URL | 2010年03月10日(Wed)16:26 [EDIT]

こんにちは(^^)
主人がイーストウッドが大好きで反強制で
彼の作品を見せられています(笑)
しかも山田康雄さんの吹き替え版DVDも
集めてます(^^;)
私にはどの作品も重たくて・・・。
でもこの作品は尊敬するマンデラ元大統領の
ことなので見たいと思ってました。
しかし、いつも劇場に行っていた主人がめずらしく
今回の作品は行かないと、なので
レンタルになりそうです(^^;)

>hiromi さま。

P | URL | 2010年03月10日(Wed)23:56 [EDIT]

劇場で観ないんですか~?お一人でも行って観てきたら良いのに!
飛行機が降りてくるシーンは圧巻でしたよ。

イーストウッド、私はダーティー・ハリーなんかはあまり好きじゃないです。
あくまで監督としてのイーストウッド、爺ちゃんなイーストウッドが好きです。
重くない映画だったら『スペース・カウボーイ』が好き!
あのトミー・リー・ジョーンズは良かったし、ラストのFly me to the moonも良かったです。

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