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マイレージ、マイライフ 【自由さに かまけていたら 宙ぶらりん】

tag ヒューマン 動画付き

『マイレージ、マイライフ』 UP IN THE AIR
2009年・アメリカ
ウォルター・カーンの小説を映画化。リストラ宣告請負人が主人公のビター・ドラマ。

 不況下で仕事が増える。なぜなら首切り宣告を請け負う会社だから。って、企業も解雇通知ぐらい責任もって自分でやんなさいよ!と先ず言いたい。それが礼儀だとも思うわよ。

 そんな死に神のような仕事で辣腕を発揮する主人公ライアンにジョージ・クルーニー。1年のうち322日を出張で過ごす。その為、人生の荷物は少ない方が良い、が信条。それは人間関係においても適用され、誰とも深くコミットしようとしない。実際に独身貴族でクールなクルーニーが演じたことで真実味が出ているのもこの映画の良さ。ニヒルな表情が、虚しさ、孤独を醸し出していて引き込まれる!

 原題は“空の上(上空)に、宙に浮いて、未決定・未解決で、はっきりとしない、とても幸せ、有頂天で、興奮して、怒って”と様々な意味のある多義語。飛行機のマイルを貯めるのが生き甲斐なライアンだから、最初は空の上って意味に捉えるけれど…。この多義性が後からじわじわ効いてくる。
マイレージ、マイライフ Blu-rayマイレージ、マイライフ Blu-ray
ジョージ・クルーニー
ヴェラ・ファーミガ

コトノハ


"It's not like that. The miles are the goal."
(そういうんじゃない。マイル貯めるのが目的なんだ。)

 そんなにマイルを貯めて何に使うのか、と問われたライアンの答え。1000万マイル目標!じゃあ、貯めた後はどうするんだ?って思うよね。ライアンはマイルに取り憑かれてるけど、こういうことってある。貯金自体が目的になっちゃってたり、収集すること自体が目的になってたり。大学入学や資格獲得自体が目的になってしまってたり。大事なのは、それをどう使うかって方なのにね。反省!

どんな映画?
 青を基調とした映像で、寒々しい。でも青は透明感があって美しくもあるし、どこか落ち着く。こういう一貫した映画の色合いって印象に残る。

 オープニング、タイトルバックの空撮が「空から日本を見てみよう」みたいで楽しい。シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスの"This Land is Your Land"の音楽にのせて、アメリカ上空から下界を見下ろし移動する。掴みはOK!

くもみ!なんじゃあれは?不思議な円グラフじゃ~!(@オマハ郊外)

大きな地図で見る

 ライアンは自分と似た女性アレックス(ベラ・ファーミガ)に出会い大人の関係を楽しむ。一方、会社では新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)が、実際に出張する代わりにインターネットで解雇通告をすれば大幅な経費削減に繋がると提案。ショックを受けるライアンはナタリーをやりこめたが、上司に彼女の教育係を任命される。

 この映画には人間の多面性がこれでもか!と描かれている。仕事の顔、恋人の顔、家族の顔、誰だって幾つもの顔を持っていて使い分けている。自分の役割を演じていると言っても良い。それが面白くもあり、哀しくもある。加えて、人間の一貫性のなさというのか、曖昧さもよく出てた。この人はこんな人、って明確に定義づける事なんてできないものだよね。

 ライアンの希薄な人間関係は、自由だけれど孤独だ。責任も、しがらみもない。その代わり深い愛情や絆を築けない。もし、すべてを失ったとき、人との絆や愛情だけが自分を生かしてくれるものだと思う。だから、ライアンが解雇通告してきた人達はきっと、仕事を失っても絆の為に生きる気力も沸いてくるだろう。

 といっても、ライアンは決して冷血漢ではないのがまた面白い。とても人間的な暖かさをもって人に接している。そんな面を見ると、ライアンという男が魅力的に見えてくる。恐らく、人一倍責任感の強い男なのだろう。だから一度深く関わったら面倒を見ずにいられない質なんじゃないか。こういう人は、知らないうちにどんどん荷物が多くなっていく。常に深い関わりを避けるよう意識していないと。

 ところで、首切り通達人ライアン&ナタリーとの会話がない幾人もの解雇通告された人達は、俳優ではなく、本当に最近解雇された人たちだそうです。カメラに向かって喋ってる言葉は彼らのホンモノの思いなんですね。

エンディング曲がまた素敵。全体的に曲が良かったなぁ!

"Up in the Air"/Kevin Renick


 さて、目指せ1000万マイル!なライアンさんでしたが、映画の中で説明されたような特典は実際には存在しないんだそうです。特別なカード、機長とのひととき、特別な会…これらはフィクション!
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ネタバレごめんのラスト談議
 この映画のラストは様々に解釈可能。原題と同様、多義性がある。人に多面性があるように、物事の捉え方は人によって違うもの。同じものを見て、同じ体験をしても、導かれる結果は違うもの。なので正解はないと思うの。ここには私の感じたことを書いておきます。

 一周回って、以前のような生活に戻ったライアン。空港でふと発着ボードを見上げて、ナタリーの言葉を思い出す。「溜まったマイルでどこへでも好きなとこに飛べばよい」。会社を辞めて海外に遊びに行く想像をしてみる。でも自分が独りなことに虚しさを覚えて、共に旅する誰かがいればなぁと思っている。自らのカラっぽさを強烈に実感する。それがキャリーバッグから手を放す仕草の意味かなぁ、と。

 バックパックに詰めて背負うものは少なくて良い。でも一緒に旅する誰かがいてくれること、その誰かは決してバックパックに詰め込むような荷物じゃないってこと、それをしみじみと思っての、あのキャリーバッグから手を放す動作、なのかもしれない。

 いずれにしろ、ビターなラスト。いやでも心境の変化は確実に起こっているのだから、彼はここから再出発をするんだろうって希望は灯る。なんとも哀愁漂う、空しいラストだろう。ライアンの表情、背中、指先から孤独感が迸る。
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関連作品のようなもの
マイレージ、マイライフ (小学館文庫)原作小説。
マイレージ、マイライフ (小学館文庫)
ウォルター・カーン
マイレージ、マイライフ オリジナル・サウンドトラック音楽もしみじみ良かったです。
マイレージ、マイライフ オリジナル・サウンドトラック
グラハム・ナッシュ
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [DVD]飛行機や空港が舞台の映画と言えばコレ!
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [DVD]
マーティン・シーン; クリストファー・ウォーケン

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