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月に囚われた男 【月面の 知らず知らずの 永遠を】

tag SF ミステリ サスペンス ヒューマン

『月に囚われた男』 MOON
2009年・イギリス
英国産の硬派なSF。月で一人仕事する男のミステリ。

 これは良いSF映画!硬派なSFが好きな人にはタマランよ!'70年代、'80年代のSF映画へのオマージュも散りばめられ、古き善きSFワールドが広がる。なんせ舞台が月基地ですよ。最も身近な天体。しかも月で何してるかっていうと燃料採掘。核融合発電の原料ヘリウム3を精製してるってんだからハードSFっぽい。これをたった33日の撮影、500万ドルの予算で撮ったのは凄い(第9地区は3000万ドル)。

 邦題が気が利いてて良いですね。監督ダンカン・ジョーンズはあのデヴィッド・ボウイの息子さん。ハロー、スペースボーイ!父ボウイ主演のSF映画『地球に落ちてきた男』(1976年)を匂わせる邦題なんですね。しかも内容も的確に表している。原題どおりに単に『ムーン』だとゲームの方思い出しちゃうもんね。んなこたないか。

 主役サム・ベルに『マッチスティック・メン』サム・ロックウェル。ほとんど一人芝居だよ。いや素晴らしい!
『月に囚われた男』『地球に落ちて来た男』DVD-BOX『月に囚われた男』『地球に落ちて来た男』DVD-BOX
サム・ロックウェル
(月に囚われた男)
デヴィット・ボウイ
(地球に落ちて来た男)

コトノハ


"I'm here to keep you safe, Sam. I want to help you."
(私の役目はあなたを守ることです、サム。お手伝いしたいのです。)

 そうプログラムされているから、と人工知能搭載ロボット―ガーティー(声:ケヴィン・スペイシー)は言う。このロボの行動が物語のキーとなって展開します。HALのような目を持ち、モニターにスマイリーを表示して感情を表す。答えたくない質問をはぐらかしてみたり、アーム(腕)を肩にそっとのせてサムを労ったり。妙に人間臭いガーティーがタマラン。

どんな映画?
 ああ、SF観た!って思える、懐かしさのある小品。本当に素晴らしいです。英国SFの伝統を今に蘇らせたような、クラシックSF小説に満ちていたペーソスを映画にそのまま持ち込んだような。最近のSFはスカッとし過ぎてるんだよなぁ。'80~'90年代SF小説っぽいとこもあって、生命とはなんぞや、倫理、哲学、社風刺といった要素があります。これだよ!

 さて。ボウイはSF好きで知られてますが、そんな父に育てられたのだからSF英才教育を受けたと言っても過言ではないでしょう。だから過去の素晴らしいSF映画へのオマージュがてんこ盛りで楽しい!『2001年宇宙の旅』の人工知能、『サイレント・ランニング』のロボと二人きりのお仕事、『ソイレント・グリーン』的な資源不足と企業活動、『惑星ソラリス』的パラノイア。全体的なデザインもレトロで薄汚さがあるのがまた良いです!

 インタビューで、父には多大な影響を受けていると認めている監督。でも父の音楽にだけは影響を受けていない、なんて言ってたんですけどね。いやいやどうして。のっけからボウイっぽい音楽じゃあないですか。グラマラスなピアノといい、美しくもどこか哀愁に満ちたメロディといい。ああ、音楽も素晴らしいよ!作曲はクリント・マンセルさん。サントラ欲しい!

 月表面をローバーが走るシーンはミニチュアの実写にCG加工を重ねたもの。この映像がリリカルで好き。特に地球を臨むシーンは切なくて素敵!ミニチュアミニチュアしてるっちゃーそうなんだけど、だがそれが良いんだ!最新のオールCGにはない良さなんだ!

 さて。内容については、本当に白紙状態で観るのをオススメするので詳しくはネタバレコーナーで書くことにします。といっても、お話自体はすごくシンプル明快!それでいて、どうなるんだろう?と惹きつけるサスペンス感が素晴らしい。

主人公の孤独感・郷愁を軸に、企業の労働倫理・傲慢な体質、大多数の幸せのためなら少数の個人を犠牲にすることは許されるか…とSFらしいテーマを織り込んであります。寂寥感、悲運、そして決意に漂う無常感。ラストのナレーションで提示される未来には、一抹の哀しさを感じます。

 そもそもそれ程重要な仕事なら一人はオカシイだろ!とか、ロボットオンリーで出来ないのか?とか、基地の中の重力が地球並みじゃないか!とかいうツッコミはしたいところだけどね。まあいいじゃん。

 ところで、本作に登場する会社はルナー産業。なぜか韓国系企業の様子。基地の名前はサラン(韓国語で愛)だし、基地にハングル表記のパネルがあったり、録音音声には韓国語のサヨナラ(なんだっけ?アンニョンなんちゃら)が使われていたり。今や時代は韓国なんでしょうか?日系はもはや没落!しかし中国系企業だったらしっくりくるんだがなぁ。洒落にならないからダメ?

 ダンカン・ジョーンズ監督は今後もSF映画を撮り続けるようです。次回作"Source Code"はタイムトラベルものでジェイク・ギレンホール主演、ベラ・ファーミガ、ミシェル・モナハン共演。2011年公開予定!もうひとつ準備中のブレードランナー風@ベルリンの"Mute"も控えていて楽しみです。
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ネタバレごめんのコネタ
・掘削機(ハーベスター)の名前が聖書の福音。マーク、マシュー、ルーク→マルコ伝、マタイ伝、ルカ伝。

・冒頭、ランニング・マシンの上のサムが着ている黄色いTシャツには"Wake me when it's quitting time"(退社時間になったら起こして)と書かれている。これが前任者も映像の中で着ているし、スリープ状態のサムの枕元にも置いてある。もの凄く皮肉なTシャツね、これ。quitは辞めるの意味もあるから、辞めるときに起こしてねって意味になるもんね。
Tシャツ売ってた⇒WAKE ME WHEN IT'S QUITTING TIME T-SHIRT(Zazzle.com)
※色違い、レディースサイズもあるよ。

・ガーティーはHALと同じでそろそろ自我が芽生えたのかもしれないよね。今まで起こらなかった事故が起こって、対処するうちにサムに何らかの感情を抱いたのではないかと。ゴーストを獲得したと思いたい。だって、そうでなきゃ今までの行動の説明がつかない。ガーティーはいつでも終わりに出来た。映画の中で他の誰でもないガーティーの中にヒューマニズムが見えてしまうのが、最大の皮肉。

・通信妨害があれだけ頑丈に設定されているなら、ガーティーはなぜ地球と交信できていたのか。本社がコントロールしてるからアチラから月に通信したときだけ妨害解除できるってことか。それにしたって通信の時差がなさ過ぎる。どんなテクノロジーですか。

・3年リミット。放射線のためか、彼らの寿命なのか。症状だけ見ると放射線っぽいけど短期間過ぎる。オリジナルのサムは明らかに勤めを果たして地球に帰還しまだ生きている(電話の声)。ってことは放射線のせいじゃない。彼らの寿命が設定されてるってことか。一人で狂わずに仕事をこなせる期間ってことで。ということは…あのサムの運命も…。

・ひとつ残念だったのは序盤サムが火傷をするシーンと事故にあったときに出てくる幻。あの幻の女性はどう考えてもファンタジー過ぎた。雰囲気作りには『ソラリス』っぽくて効果的だったけど、見終わって考えるとあのエピソードは余計だったように思う。監督曰く、現在の娘の姿が本体との不思議な繋がりで見えてしまった、ということらしい。いらないなぁ、そういうの。
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コメント


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たまりませんでした!

なるは | URL | 2010年05月07日(Fri)01:33 [EDIT]

こんばんは!
本当に良い映画でした!
SFの中に、倫理観がちりばめられていたり、
独特の人間関係がとっても良かったです。
思い返しただけで鳥肌です。

色々突っ込みどころはありますが、
それすら全く気にならない作品でした。

ルナ産業が韓国企業であるのも、未来ぽかったです。
アメリカを中国を日本を一発逆転した韓国って感じでした。

幻覚の女性がもったいなかったですね・・・。
そういう意図があったなら、まぁ納得できるような、できないような…。

音楽も、チープながらも見せ方が上手な映像も、サムの演技もストーリーも最高でした!
また観たい!DVD買うかも!?というくらいです!

ばるたん(V)o¥o(V) | URL | 2010年05月07日(Fri)18:48 [EDIT]

よくぞ観てくれました!
この作品の毛玉が書かれることを、
楽しみに待っていました。

そしてそして、色々な情報を含め、
まさにそのとおり!!って、上質な感想を
読ませていただき、
改めてもう一度この映画が観たいと思いました!!

>なるはさま。

P | URL | 2010年05月08日(Sat)00:49 [EDIT]

とってもSFらしいSFでした!
本来的にSFは風刺だったり、人間性を問題にしたりするものなので、それが前面に出た映画だったな、と。

すごい演じ分けでしたよね。壮健なのと、蝕まれたのと。

音楽素敵でしたね~!わしもDVDもしくはサントラが欲しいっす。
あまりモノ増やしたくないから買い控えてるんだけども。悩む-。

>ばるたん(V)o¥o(V)さま。

P | URL | 2010年05月08日(Sat)00:55 [EDIT]

これはずーっと楽しみにしてた映画です。
昨年末から観たくて、日本公開されるかどうかハラハラドキドキしてたんですよ。
良いSF映画観ました。
ボウイの音楽聴きたくなりました。

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