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不思議惑星キン・ザ・ザ 【マッチ棒 それが社会の ヒエラルキー】

tag SF ファンタジー

『不思議惑星キン・ザ・ザ』 Кин-дза-дза! / (英題)KIN-DZA-DZA!
1986年・ソ連
ソ連、社会主義時代のへんてこSF映画。資本主義を風刺。

 邦題は惑星キン・ザ・ザって言ってるけど実はキン・ザ・ザは星雲の名前。迷い込んだ星の名前はプリュク。どうでもいいけどさ。おっさんが主人公のアリス・イン・ワンダーランドと言っても良いかもしれない。

 初めて日本公開されたのが1991年で、その後2001年にもリバイバル。なんかちょこちょこリバイバル上映されてます。この度は東京の早稲田松竹にて1週間上映されたのを観てきました(5/8(土)~14(金)の上映)。昔観たんだけど、スクリーンで観るのは初めてざんす。クー!

 社会主義の国が描いた資本主義国、それ即ちキン・ザ・ザ星雲。今、この映画とマイケル・ムーアの『キャピタリズム マネーは踊る』を併せて観ると良いかもしんない。
不思議惑星キン・ザ・ザ [DVD]不思議惑星キン・ザ・ザ [DVD]
スタニスラフ・リュブシン
エヴゲーニー・レオノフ

どんな映画?


 この手の変てこSF映画にしては長い134分の本編。途中中だるみはするものの、最初の勢いと後半のシリアスなドタバタ脱出劇は飽きない!そしてラストがまた良い!だから途中で観るの止めないで、最後まで観てほしい映画なんだぜ。馬鹿馬鹿しさとサーカズムが良い具合に混じり合った逸品。

 妻に頼まれて買い物に出掛けるおっさんマシコフ。店の前で出会った青年ゲデバンに、裸足の変なおっさんが外の星から来たと言っていて困る、と相談されて様子を見る。裸足のおっさんは確かにオカシナ事を口走り、彼が瞬間移動装置だというモノをマシコフは押してしまう。次の瞬間、マシコフとゲデバンは砂漠の中に二人佇んでいた。

 この序盤のテンポの良さと、物理法則一切無視の宇宙船のような乗り物でやってくる二人のプリュク星人のヘンテコさにグっと鷲づかみにされるよ。クー(この星の挨拶や会話)!それに、何とも乾いた世界観が素敵。砂漠ばかり広がるのも、海を燃料として使い切ってしまったからだ、というコレまた風刺。

 全体的に資本主義を欲深社会と皮肉っているわけで。見返りなしには、人に何かしてあげようとは思わないこの星の人々。そこに迷い込んだ地球人は道義や人情、友情を重んじた行動をする。この異星人との噛み合わなさがユーモラス。

 この星ではマッチ棒が非常に価値あるモノで、たくさん持っていれば持っているほど敬われる。意味のない、地球人にしてみたらガラクタ同然のものが、異文化では高価!有用か如何に関わらず、表層的なモノの価値は文化によって違ってくる、そんな皮肉も見受けられる。

 更に、マッチ棒をどれだけ持っているかがステータスとなり、ヒエラルキーを形成しているのは丸っきり資本主義社会だ。それと別にチャトル人とパッツ人の二つの人種が決定的に分けられ、パッツ人は二級市民扱いされているのは人種差別を思わせる。ただ、彼らの場合は見た目に違いはなく、小さな判別機が緑に光るかオレンジに光るかで判断される。ここら辺は、妙な挨拶と相まって、ヨーロッパ社会の貴族制度を風刺したものかなぁと(※ロシア人とグルジア人の関係だとか?)。王様みたいのも出てくるし。王様っていうかアレは法王?イエス?何だろう?PJ様。

 で、だ。社会主義国が描いた資本主義国なんだけども、最後の方でαって星が出てくる辺りが秀逸なのよ。プリュク星の民は欲に支配されているから、こう変化させた方が幸せなの!と決めつけてくる上位階級っぽいα星人。それに対し、マシコフのおっさんが言う。そんなこと決める権利は誰にもない!と。人間の自由意志を剥奪する権利は、権力者だろうと神だろうとないのだ。

この場面こそがこの映画の名作たる所以。資本主義国が社会主義国或いは共産思想を描くとき、負の側面を強調し糾弾することが多いように思う。でもこの映画ではそれに“仕返し”せずに、それぞれの社会は違うのだからお互い価値観を押しつけ合うのは止めようじゃないか、という風に描いているように思う。

同時に、社会主義国家への反発もまた見えるような気がする。権力者が民の自由意志を奪うことへの抵抗。極端な資本主義への、極端な社会主義への、畏れ。そのもやもや感が良い!マイケル・ムーアは『キャピタリズム マネーは踊る』で、新しい政治を求めて変わらねば!と問題提起している。このキン・ザ・ザはその前段階だったかもしれない。

 地球人とプリュク星人、違う文化の彼らは結局わかり合うことはできないながらも、うっすら友情が芽吹く。マシコフのおっさんとバイオリンを持った青年ゲデバンの地球人コンビには、強い絆が生まれるのもまた清々しい。ラストのカタルシスが、中だるんだことも忘れさせてくれる。
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