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ザ・ロード 【絶望に プロメテウスの 火を運ぶ】

tag ロードムービー SF ヒューマン サスペンス

『ザ・ロード』 THE ROAD
2009年・アメリカ
コーマック・マッカーシーの2006年の小説を映画化。

 核の冬を思わせる厚い灰色の雲に覆われた空。陽光が少ないために寒冷化が進み、地震や地割れが頻発し、木々は倒れ、動物も植物もほとんど死に絶え、僅かな生き物たちが絶望の中どうにか生きている。この世の果ての荒涼とした世界。何故こんな事になったのかは説明されない。

 そんな文明の崩壊した状況で、主人公の父親(ヴィゴ・モーテンセン)と息子(コディ・スミット=マクフィー)は旅を続ける。互いを思い合い、信じ合って海を、南を目指して希望を繋ごうと歩き続ける。2人が旅の最後に見るものは、希望か絶望か。

 静かに淡々と進むロードムービー。タイトルの『ザ・ロード』の通り、ひたすら道を行く。それがどこに続く道かもわからずとも。何でもないようなことが~幸せだった思~う♪何でもない夜のーこーと♪二度とは戻れないよーるぅ♪はい、ロード第何章?いや、うっかりこの歌詞、合ってるのよねえ、映画に。ありがとう虎舞竜!
ザ・ロード [Blu-ray]ザ・ロード [Blu-ray]
ヴィゴ・モーテンセン
コディ・スミット・マクフィー

コトノハ


"What would you do if I die?"
(僕が死んだらどうする?)

 父親の希望の灯は息子。だから息子は問わずにいられない。希望を託される身というのも、それはそれで辛いのではないか、と思う。

どんな映画?
 核の使用によるのか、彗星の影響や隕石の衝突なのか、太陽か地球が死にかけなのか、大規模な火山噴火なのか、気候変動なのか。天変地異か人為的かもわからない。ただ、今までの世界はもうそこにはない。文明崩壊から10年余りが経った頃、まだ生き延びて危険な旅を続ける親子。

 あ、でも舞台はアメリカであって、その他の世界がどうなっているのかは不明。原因がわからない以上、アジア・アフリカ・ヨーロッパなどがどんな状態なのか知る術はない。それに、船なんかがないと他の大陸にも行けないだろう。

植物がなくなれば草食動物がいなくなり、肉食動物がいなくなる。地上は地獄だ(枯れ木立があるので木の皮を食べて鹿なんか生きられそうですが)。けど、海の中で魚は生きてるのかな?(呼吸や炎の燃え具合から)酸素は充分にありそうだから海草は元気なのかもしれないね。

 で、まあそんな世界で。巷には食糧不足から人肉を喰らう集団も跋扈し、僅かな生き残りの人々は互いに奪い合い、疑い合い、恐がり合う。絶望に満ちた世の中で、絶望に身を任せて命を絶った母親(シャーリーズ・セロン)の言葉通り、暖かさを求めて南下する父親と息子。息子は母のニット帽を大事にかぶっている。

 過去の美しい思い出部分は鮮やかな色遣いで、破滅後のモノトーンの世界と対称的。まだ、こうなる前は、明るい日差しと咲き乱れる花と輝く植物の緑に色づいていた。何でもないようなことが、幸せだったと思う(by虎舞竜)。スコアもピアノの音色が美しく哀しい。ここぞという場面では音楽を使わないのもグッとくる。

 辛く厳しい旅路だけど、時には喜びもある。虹を見たり、水浴びしたり、思いがけない幸運で食事にありつけたり、初めてのヌカ・コーラを味わったり。父は息子を守るために、誰も信用せず、やられたら徹底的にやり返し、余計なお荷物になりそうな人間にも冷たく接する。そうすることで、息子が1人になっても強く生き延びられるように教育してもいる。

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 終末の世界で海を目指してサバイバルっていうと、謎の伝染病を描いた映画『フェーズ6』を思い出した。あちらのラストはもっと切なくリリカルで、より希望のないもの。あちらは兄弟が中心で、兄が弟を守っていたのが終盤には弟を鍛えるためにアレコレする。そこらへんも本作と似てる。こちらは父親が息子を守り、手本となって鍛えようとする。父親だから、より全面的に保護するし、息子以外の誰に対しても冷徹だけど。『ザ・ロード』が好きならきっと『フェーズ6』も好きになると思うので是非。

 世界の終末サバイバルものは大好きで、これも原作を読みたくなってきた!映画も良いけど、小説もね!ジョン・ウィンダムの『トリフィド時代―食人植物の恐怖』、宇宙人の侵略で文明が後退した世界を描く『トリポッド』4部作(ジョン・クリストファー著)、最近ではゾンビ戦記『WORLD WAR Z』(マックス・ブルックス著)などなど傑作です。是非ご一読あれ!

 途中出会う老人(ロバート・デュヴァル)が自分の名はイーライだと名乗る。あら!ちょうど同時期に上映中の、なんだかイメージのダブる終末SF『ザ・ウォーカー』の主人公の名前がイーライ!原題が"The Book of Eli"で“イーライの本(聖書)”て意味なのよさ。

映画同士に直接の関連はないけど、イーライ(エリ)って名前は旧約聖書サムエル記に出てくるシャイロ(シロ)の聖職者(老齢に達すると目が見えなくなる、息子達は神を冒涜した罰で死んでいる等本作との共通項も見られる)。また、キリストが十字架の上で口にする“神よ”の意味(エリ、エリ、レマ、サバクタニ)。更にまた、キリストの前にキリストの役割を担った預言者エリヤ(Elijah)を指す場合もある。映画の中で父親が老人の名を聞いて「冗談だろ」と言うのはこういった背景の為。二つの似た映画がこの名前を使ったのも偶然じゃないってことだ。

 最後に会う人達は、犬の存在がすべてを説明してくれる。彼らだったのか、という思いと、犬も大事な仲間として(喰らわずに)扱う彼らの人間性に微かな希望を感じられる。彼らがなぜもっと早く声をかけなかったのかは、わかるでしょ?あの父親に無闇に近づいたらコチラの身がアブナイって思っちゃうよね、そりゃあ。

 説明されないことが多いけどそれはそれで良いや。実際に文明が崩壊したら、原因なんて究明する余裕もなけば、それを知る人々もごく僅かだろうし、伝達の手段はないし。

それでも一つ、気になる。途中で出会うナイフの黒人さんと、ラストの男の手の親指がないこと。あれは何だろう?意味深に手が大写しにされると親指がないって。やくざ?親指の不在は人類の退化を象徴したイメージに過ぎないかもしれない。ほら、拇指対向性(親指が他の指と向かい合う形)に進化した事実が道具を使用可能にし、ヒトを器用にし、文明を築いたわけだし。
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俳優は誰?
 これは父と子の物語だから2人は出ずっぱり。父親ヴィゴはスッパダカ×2のサービスもしつつ、見るものを圧倒する存在感と凄み。思い出の中のきれいなヴィゴはインテリ風。『指輪物語』のアラゴルンが一番メジャーな役かな。私は馬のヒダルゴと砂漠を駆ける『オーシャン・オブ・ファイヤー』が好きです!

 そいて息子役のコディ君はどことなく母親役のシャーリーズに似ている。そしてあの子供特有の甲高い声が可愛い!いやあ素晴らしいねえ。コディ君は、スウェーデンのこども吸血鬼映画『ぼくのエリ 200才の少女』(原題"Let the right one in")のハリウッド・リメイク版"Let me in"に主演ですのよ!先日予告編が出たばかりですけど、とても良さそうよ!

 他、『ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ』のターミネーター・クロマティ(ギャレット・ディラハント)や、ガイ・ピアース、ロバート・デュヴァルもチラリと出演して味わい深い。

関連作品のようなもの
ザ・ロード原作本。文庫も出てるよ。
ザ・ロード
コーマック・マッカーシー
血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)同じ著者でこちらも『ノー・カントリー』の題で映画化された。
血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)
コーマック・マッカーシー
すべての美しい馬 (ハヤカワepi文庫)同じく、こちらも映画作された。
すべての美しい馬 (ハヤカワepi文庫)
コーマック マッカーシー
トリフィド時代―食人植物の恐怖 (創元SF文庫)この小説と似ている。崩壊の原因が明確に語られないところも。
トリフィド時代―食人植物の恐怖 (創元SF文庫)
ジョン・ウィンダム
ザ・ロードザ・ロード
虎舞竜

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ザ・ロード (The Road)

監督 ジョン・ヒルコート 主演 ヴィゴ・モーテンセン 2009年 アメリカ映画 112分 ドラマ 採点★★★★ 親が子供を殺すニュースほど、聞いていて陰鬱な気分になるものはないですねぇ。“子供は親の所有物である”を前提にしたかのような罰の軽さも、その気分を一層…

Subterranean サブタレイニアン 2010年12月20日(Mon) 16:55

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