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ザ・ウォーカー 【争いの 火種は神か 欲望か】

tag SF アクション サスペンス ヒューマン

『ザ・ウォーカー』 THE BOOK OF ELI
2010年・アメリカ
ヒューズ兄弟監督の終末SFアクション。

フロム・ヘル [DVD] ジョニー・デップ主演のダーク・ミステリ『フロム・ヘル』のアレン&アルバート・ヒューズ兄弟監督の映画ですよ。この双子監督、雰囲気作りはとっても巧いのに、正直わけがわからんイマイチな作風。

と思っていて、今回もまあそんな感じですた。そんな彼らが実写版『AKIRA』2部作の1作目の監督なんですが大丈夫でしょうか。

 ハイ本作、私はあんまり面白くなかったです。ブレード・アクションや迫力のガン・アクションは素晴らしかったよ!素晴らしいけど量的には少ない。から、純然たるアクション映画にはなってないんだな。もっとアクションを見せてくれたなら、ストーリーなんかどうだって良いよ!っていう『リベリオン-反逆者-』的楽しみ方が出来た筈なのだ。雰囲気や役者はすごく良かったから勿体ない感じ。

 主役のウォーカー(旅人)ことイーライにデンゼル・ワシントン、町のボスで本をイーライから奪おうとするカーネギーにゲイリー・オールドマンと聞いたらこれは観るよね!べっぴん町娘ソラーラに、可愛いんだけど演技面はイマイチなミラ・クニスちゃん。他にもレイ・スティーブンソン(カーネギーの右腕)、マイケル・ガンボン(人食い爺さん)、ジェニファー・ビールス(カーネギーの恋人)、トム・ウェイツ(カーネギーのエンジニア)、マルコム・マクダウェル(アルカトラズの男)といった渋い豪華キャスト。
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デンゼル・ワシントン
ゲイリー・オールドマン

コトノハ


"Ask and you shall receive. God is good, is he not?"
(求めよ、さらば与えられん。主は恵み深き。そうだろ?)

 “求めよ、さらば与えられん”は聖書ヨハネ16章から。自ら求めれば主が必ず与えてくださるってことで、カーネギーは求めるものを手にしたときにこう言う。"God is good"は詩篇だったか。ジョーン・オズボーンの『ワン・オブ・アス』って曲の歌詞にも出てくる、よく聞く言葉でござるよ。イェーイェーガッディーズグーッ♪

どんな映画?
 この映画の感想をネタバレなしで書こうってのは無理。早々に諦めた。で、原題では一目瞭然な内容が、日本の宣伝の感じだとどうやら謎とされているっぽいので、そこも書いて良いのか迷ってしまう。ということで、原題の意味については少々ネタバレなので、ネタバレコーナーにて詳述します。

 映画のテーマは信念と希望。自分の内なる声に耳を傾け、疑うことなく目的に邁進することの力強さ。信念は奇蹟を起こすぜ、と。そしてどんなに光が見えない状況でも、自らを信じて希望を繋ぐこと。希望はパワーだから。誰かの希望が別の誰かを救い、人と人とが希望で繋がる。

1024b.jpg 映像はセピアがかったトーンで、極度に彩度が低く、荒廃感に満ちている。そりゃあもうマッドマックス的な滅亡後の世界。そこで先日観たヴィゴ・モーテンセン主演『ザ・ロード』を思い出す。

 設定は似てるけど、中身はまったく違ったよ!絶望の中の希望って意味では同じ。でも描き方が全然違う。『ザ・ロード』の親子には生き延びる為に南下するって漠然とした目標があっただけ。こちらのイーライにはハッキリ本を西へ運ぶって目的がある。

 『ザ・ロード』では文明崩壊から10年余りの世界で弾薬も食糧もほとんど尽きていた。こちらは破滅(戦争で空が光った、オゾンホール出現で太陽光に焼かれたと説明がある)から30年後の世界。にしては、弾薬豊富過ぎた!ガソリンも豊富っぽい!30年経ってもiPod動いてるし、ジーンズやネルシャツも綺麗な状態。食糧と水については、まああるだろうなって感じなのでOKだけど。

 さあ、ゲイリー久々に悪役!と思ったけど、町の顔役カーネギーはそんなに悪い人じゃない。本を権力の象徴と見るあたり、ああ教養人だなあって感じだし。なんだかんだ言って、多少横暴でも町の平和を維持してるじゃん。殺し合って人肉食わないように、文化的な生活を敷いてる。本を欲するのも、人心掌握して権力を手中にするのが目的としても、それってそんなに悪いこっちゃない。現在の権力者と同じ同じ。

 そこには、宗教が争いの種となる皮肉、絶望の世界では権力の道具に使われる事実が見える。実際宗教は、古今東西、権力闘争(政治)に密接に絡んできたのだし。それでも、民には希望となり生きる支えともなる。そんな為政者と民の捉え方の違いが描かれていたと思う。そもそもの戦争の原因が宗教なのではないか、という言及もあったり、世界の終わりの描写がアルマゲドンを想起させるものだったり。キリスト教マンセー映画に見えて、割と皮肉な感じもするなあと思ったよ。

 あと、行く先々で言われる「手を見せろ」はクールー病(狂牛病みたいなもの)じゃないことの確認。人肉食で脳や神経系を食べると患うことがあるらしい。異常プリオンがどーののあれ。症状は全身の震え。ってことで手が震えているかどうかで人肉食かどうか判断してんのね、この世界の人達。単に老いとか普通の病気でも震えるよなあ。

 私はラストのオチどうしても気に入らないんですよ。ラストで良かったとこも勿論あるのよ。終盤の音楽の美しさや、本の行方や、あんなところは。しかしそれらを軽く上回る、この納得のいかなさ!えー(´д`)ってなった。思い返せば伏線はあったけど、いや、説明できないような場面だってたくさんあったよう!以下、ネタバレコーナーに続く。

破滅前はKマートの店員てのが、元はそこらへんにいる普通の人間なのね、って感じで嬉しい。
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原題の意味と、聖書関連 ―※ネタバレ
第五の山 (角川文庫) 主人公イーライEliの名は預言者エリヤを意味する場合もあり、イーライの性格付けに影響を与えたような気もします。エリヤは神の言葉に忠実で従順な信仰の人。そして結構な数のイスラエル王の部下を神の火で焼き殺してもいる。最期は死を待たずに天に召されたという、神様の超お気に入り!

 エリヤの人生は旧約聖書/列王紀上第17章~列王紀下第2章までを参照ください。エリヤをモデルにしたパウロ・コエーリョの小説『第五の山』も良い本ですお。

 あとは旧約聖書サムエル記上(第1章~4章)で語られる祭司エリ(Eli)ですかね。といってもイーライとエリの共通項はほとんどないと思うけれど。エリが盲いたのは老いてから(“さてエリは、しだいに目がかすんで、見ることができなくなり”、“その時エリは98才で、その目は固まって見ることができなかった”)だしなあ。神の箱(契約の聖櫃)を守るってお役目が、本を守るイーライと似てるっちゃあ似てるけど。

 また、Eliはヘブライ語などで“神よ”の意味もある。そう考えると原題"The Book of Eli"は明らかに“我が神の本”てことになるね。たぶんコレじゃないかな、この映画の意味的には。英語で定冠詞付きの大文字のThe Bookと言えばそのものズバリ聖書を指すことが多い(最近ではフェイスブックを意味するネット・スラングになってるけど)。二重の意味でしっかりと聖書だな!ちなみに大文字のHe、Hisって代名詞は神またはキリストのことを指します。

ネタバレな呟き ―※観てから読んで!
 ネタバレせずには何も書けない!イーライのラストのオチはあれ、誰があれで納得するの?見終わった後のまんじりともしない気持ちはコレ何だろうか。そこは横道というか、テーマとは別のところにあるとはいえ、主人公の行動全てに関わるだけにどうにも引っかかる。マッドマックスmeets座頭市って。

 はい、あの。描き方としてはラストで急に「俺、見えてないねん」てことでしたよね。瞳のアップに微かな濁り、自分で書かずに口述筆記の描写がアレな聖書を補強してる。で、思い返してみると、だ。確かに彼は実際に文字を(立て札など)読んでいない、暗がりでの読書、時折けつまずく、嗅覚・聴覚が並外れて良い、道を進むときにどうも太陽の光を手掛かりに西を選んでいる、カーネギーの盲目の恋人に優しいなどの伏線があった。

 でも待って!明らかに目が見えてないとできない行動も彼はしてるよねえ!オープニングで猫を狩った後、廃墟に宿を求めて探索する場面では水道を見つけて(手探りとかせずに)すぐにカンティーン(水筒)を出す。崖から下を見下ろしたり、戸口から庭の墓を見て「逃げよう」と言ったり、矢を射って飛ぶ鳥やレイプ未遂の男の股間にズバっと命中する。どんな盲目無双よ?!

 聖書がアレなのは別に良いけど(英語版の点字聖書が分厚いの17巻だってのは忘れてやっても良い)、イーライの目がアレってのはどうにも説得力がなさ過ぎた。何斬るかわかんないよ~見えないんだからさ~(byあごタン)。座頭市は良いけれど、イーライ、ちゃんと目が正確に動いていたし、杖も手探りもなかったでしょ。あんまりにも唐突でカタルシスないのよ。だから、イーライは点字の読める目あきに違いない、とか思う。そうでなければ、もの凄い神のご加護ってことでFA。つまり、わしがこの映画に入り込めない理由。

 それとですね。聖書を西に運ぶってのが軸なわけで何やら西遊記じみた旅物語かと思いきや、辿り着いた西の地に別に嬉しみを感じない。ふうん。で?っていう。ここから文化が再興されるルネッサンスの地なのかもしれんけど、なんだか拍子抜けなんだな。そこが『華氏451』で辿り着いた先に受ける感銘に全く追いつかないところ。

 でも、最後に見事印刷された聖書が安置される場所がトーラ(ユダヤ教の聖典で、モーセ五書―創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記から成る。旧約聖書の最初の5書)コーラン(イスラム教の聖典)の間というのは良かったな。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と発生した時系列順に並べて、どれも同列に扱っている。この3つの宗教の主は同じエホヴァ(ヤハウェ)なんだよね。それなのに争うなんて馬鹿げている。あの管理の爺ちゃんにとってはどれも大事な文化なんだな、と。
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シュタ | URL | 2010年07月07日(Wed)20:39 [EDIT]

ノベライゼーションのあとがきによると、最初は見えないということでやりたかったようですがつじつまが合わなくなるので、やめたようです。
 
順撮りしてたらしいので、伏線もそのままにしてしまったのですかね。

見えないというのもそうですが、私が気になったのはイーライどこ歩いてたのですかね? どこから歩き始めたかわかりませんが、アメリカ横断何十年もかからんだろう。と。 事実私の友人走ってですが、途中帰国したりしても半年ほどで成し遂げてます。

>シュタさま。

P | URL | 2010年07月08日(Thu)18:18 [EDIT]

えー(´д`)どっちつかずな表現で終始してましたよー。
明確にイーライはこうである!とは言ってないけど、最初から最後まで、まさにラストまで、思わせぶりな映像を挟んでいますよ。順撮りとか関係なく。

まあ破滅から30年、てのは適当だなあと思って諦めました。地下にしばらく避難していたとか言ってましたし、狩りしながらだし、たぶんあちこち迷ってたんじゃないかと。西って言われても漠然とし過ぎだから、彷徨ったに違いないですよ。

オープニングのスフィンクス狩りで猫好きの私はさーっと引いたわけですけど。まあ食べる為だから良いのだけど。

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