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フローズン・リバー 【氷上を 渡る一歩の 勇気過ぎれば】

tag ヒューマン サスペンス 犯罪 動画付き

『フローズン・リバー』 FROZEN RIVER
2008年・アメリカ
ニューヨークとカナダの国境に広がるモホーク族居留地での女達の冒険。

 コートニー・ハント監督の長編映画デビュー作。元々は監督自身が撮った15分の短編だったものを長編化。寒々とした風景、貧しい環境、その中で逞しく生きる二人の母親をサスペンス・タッチで描く。

 いわゆるホワイト・トラッシュの母レイ(メリッサ・レオ)と、先住民モホーク族の孤独な女ライラ(ミスティ・アッパム)がひょんなことから出会い、共に犯罪で金を稼ぐようになる。ハラハラ感と悲哀と、相手に共感するまでの関係のシフトを丁寧に描いた良作。ヒリヒリする貧困生活もリアル。
フローズン・リバー [DVD]フローズン・リバー [DVD]
メリッサ・レオ
ミスティ・アップハム 他

コトノハ


"I want my half."
(分け前をちょうだい。)

 きっちり分け前を要求するレイは無謀にも見えるが、本人の言うとおりに真面目なだけだろう。真面目に働いて(それが例え犯罪行為でも)、自分の受け取るべき報酬を受け取る。横取りされたり誤魔化されるのは我慢ならない!普段の仕事でも自分が正当に評価されていないことを不満に思い、腹に据えかねている様子からも彼女の“正当な報酬”へのコダワリが見て取れる。

どんな映画?
 白く凍り付いたセント・ローレンス川。先住民の保留地は治外法権地区であるため、カナダを経由してアメリカに密入国するルートとして犯罪の多い場所。そんな危ない仕事で金を稼ごうとするモホーク族の女ライラ。必要なのは、トランクの付いた車。密入国者をトランクに入れて運ぶためだ。

 一方、1ドルショップのパートをして暮らす白人女―二児の母レイは、新居の為に貯めたお金をギャンブラーな夫が持ち逃げし行方をくらましたことに絶望していた。レンタルのTVのリース料金を払えるアテもない。クリスマスは近い。子供達にはTVが必要だし、家族には新居が必要。

 レンタルTV?そう、大きなモニタの。まだ小さな次男がおとなしく留守番しててくれるように。ささやかな給金の為に家を空ける償いとして、彼女に出来るせめてものこと。長男(15歳)のT.J.も弟の為にそのTVを守ろうとする。そして二人とも犯罪に手を染める。(後にT.J.がお婆さんに謝るのはこの為)
映画『フローズン・リバー』


 まさに氷の上を渡るわけだけど、一番恐ろしいのは最初の一歩。最初に巧くいってしまえば、安心して次も渡る。そのうち慣れてしまう。氷の上だということも意識しなくなるかもしれない。それはまるで犯罪に深入りするステップそのもの。氷が割れたとき、改めて危険な道だったのだと思い出す。

 ハラハラと二人の冒険を見守り、次第に明かされるライラの過去と現在の状況を知るうちに、のめり込んで観ていることに気づく。だって、嫌な予感しかしないもの。どんな結末を迎えるのやら。でも、最悪の結末にはならない。二人の絆、そして家族の絆を信じさせる明るさがある。劇的に生活が上向くわけではなさそうだが、それでも。
映画『フローズン・リバー』


 貧困家庭の暮らしぶりもまたリアルに描かれている。家には食糧と言えばポップコーンぐらいしかない。レイのささやかな憧れはバスタブに湯を張って入浴剤を入れてゆったりするひととき。風呂は壊れたままだから、叶わないのだけど。それでもつい買ってきてしまう入浴剤が並んでいるのが哀しい。

 父親が出て行き、母も仕事で家をあけることが多い日々。長男T.J.は弟の面倒をよく見ている。きっとすごく孤独だろうし、両親に腹も立つだろう。でも何とか母の役に立ちたいし、弟を失望させたくない。庭の壊れた回転ブランコの修理に一生懸命で、それが直れば家庭も修復できると信じているようで。余りにも、けなげ。

 また、ライラの状況も哀しく絶望的。夫に先立たれ、幼い子供は義理の母に奪われ、保留地での立場も弱い。保留地の外に出れば、白人に差別を受ける。孤独、貧困、哀しみ、苛立ち。

 二人がこれで最後と仕事をした夜。“最後の仕事”といえば映画では定番の設定な気がする。最後と決めた途端に何か悪いことが起こるのだ。その夜、二人が出した最適解とは…。家族を守ることとは…。二人は紛れもなく同志であって、それはまるで男の友情を見ているようだ。

 エンディング・ロールで流れる曲がとても美しくて印象に残る。美しく、不安定な、哀しい、したたかな、そんな歌。探したらば、あった。でも映画のサントラは見あたらず。残念!

"Ray's Echo" / Keri Latimer


 歌っているのはカナダ・マニトバのバンド、ネイサン(Nathan)のボーカリスト、ケリー・ラティマー。作詞作曲も彼女とのこと。で、そのバンドのCDも探したけど見あたらないんです。youtubeには幾つかライヴの模様があがってるので、そのうちCDの情報も入手できるかもしんまい。
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21グラム (初回出荷限定価格) [DVD]この映画が今回の配役のきっかけ。メリッサ・レオはデル・トロの妻役を演じた。
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ショーン・ペン; ナオミ・ワッツ

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