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借りぐらしのアリエッティ 【信じてよ 自然の力 生きる意志】

tag アニメ ファンタジー

『借りぐらしのアリエッティ』
2010年・日本
メアリー・ノートンの児童文学『床下の小人たち』(1952年/英国)をジブリが映画化。

 ジブリの優秀なアニメーター米林宏昌さんの監督デビュー作。脚本はハヤオ(と丹羽圭子)が担当なので、ジブリ・テイストはあるものの、ワクワクする冒険とか異世界感は、ない。それだけに、どうにも地味な印象は拭えないのだけど、生きる力についての良いお話です。舞台が田舎の邸宅とその庭だけで、人間と小人の世界はそれほど違わないので今までのジブリ映画とはちょっと違うかもな。

 こびとの一家は、人間の家の床下に住みよい家を作って暮らしている。生活に必要なものを上の住人から“借り”て生きている。一家の一人娘アリエッティ(声:志田未来)は14歳になる。そろそろ一人で何でも出来なきゃいけないお年頃。そこで“借り”デビュー!さあ、人間の家にレッツ・ゴー!

 ということで、泥棒一家に生まれた娘が泥棒デビューを果たしたは良いが、ちょっと失敗しちゃう、というお話。あ、いや、だって。“借り”っていうか普通に盗みだから、これ。借りたものは返さずきっちり消費してるからね。大量のビスケットとか、切手とかね。

 生活音や時計、冷蔵庫の唸りなどが大きく聞こえ、普通の家の中が小人にとっては一大アドベンチャーになるのが楽しい。食器棚からロープで降り、両面テープでテーブルをクライミングするお父さんの動きが無駄にカッコイイ!
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どんな映画?


 小人一家の家には切手が額に入れて飾られてたり、ペン先が花を挿す器になってたり、カラフルな糸やボタン、野草で部屋を飾り付けて、とっても明るく綺麗。ドングリで作った壺、植木鉢を逆さにして作ったレンジフード。自然で素朴で観ていて楽しくなる。アリエッティの素早い軽やかな動きも良いアニメーション!

 そしてフランスのアーティスト、セシル・コルベルの歌と奏でるケルティック・ハープの音色がとても素敵。ケルトといえば魔法や妖精のイメージが色濃く、そしてムーア(荒野)広がる柔らかく荒々しい自然のイメージ。映画のもつテーマ“自然の力”にとてもピッタリですよ。

コロボックル物語(1) だれも知らない小さな国 (児童文学創作シリーズ―コロボックル物語) 私にとって小人といえば佐藤さとるの『コロボックル物語』なんだが、それとは全く違うイメージの小人達。あまりにも人間世界に近いのに、あまりにも臆病かつ慎重。物資は人間頼りなのに、人間を信用しない。コロボックルだったら、人間世界にはなるべく近づかずに自分達だけで生活をするだろう。

 でもこのアリエッティの一家はたった3人きり。だから、人間の物資を奪うしか道はないのかもしれないね。

 原作が英国文学だけあって、この映画は舞台を現代日本に移したはずがどこか英国テイスト漂った。病気の少年=翔(声:神木隆之介)が1週間の静養にやってきたお婆ちゃん(声:竹下景子)の家は、どこか洋館っぽい。煉瓦が敷いてあったり大きいベッドやテーブルセットが備え付けてある。庭も英国式のように広くて野性的な庭。その向こうにはアーチ門の別の庭(花園?)が見える。でも玄関は和風、車は多摩ナンバー。

 でもって、小人一家はどう見たって白人種。特にお父さん(声:三浦友和)は彫りが深くて薄いグレーの瞳。途中から出てくる第4の小人さんスピラー(声:藤原竜也)はどこかの原住民ぽい出で立ち。なんともどこの国の話だかワカラン様相を呈してきた。

 せっかく舞台を現代日本に移したのなら、もっとドラスティックに日本の田舎屋敷にして小人達も日本人ぽい雰囲気にすれば良かったのになあ。何度かラズベリーの実が出てくるけど、あれも日本らしく桑の実とかコケモモあたりにして欲しかった!ムカゴでも良いよ。いやないか。

 と、どうも原作リスペクトするあまり英国情緒が抜けてない違和感はあるものの、小人たちの生活がイキイキと描かれていて面白かった。心臓の悪い12歳の少年=翔はほとんど部屋や庭で本を読んで過ごしている。彼が何の本を読んでいるのか、気になるよね!

 最初に読んでる本はタイトルがよく見えない。どうもLA DIVIN…と読めるので、これはもしやダンテの『神曲』(原題"La Divina Commedia")くさい。12歳のくせに!なんか彼の絶望感、死を見つめる姿がクッキリと浮かびあがる本の選び方です。死んだらどこへ行くんだろう、今の内に知っておきたい、みたいな。

 終盤、ドールハウスのキッチンを元に戻した頃、翔が読んでいるのはバーネットの『秘密の花園』。両親を亡くし叔父さんの屋敷に引き取られた孤独な少女メアリが、閉鎖され荒れ果てた秘密の花園を見つける。花園にまだ息づく命を感じ、屋敷のメイド=マーサの弟ディコンと共に美しく蘇らせる話。また、病弱でほとんど寝たきりの孤独な少年コリン(実は叔父さんの息子)と出会い、花園を舞台にメアリ達はコリンをどんどん元気にしていく。
※簡易版はコチラで読めます⇒『秘密の花園』(福娘童話集より)

コリンは翔の境遇とかぶるのよね。親に見捨てられ、病気で安静にしてなきゃならない孤独。でもコリンはメアリとディコンに勇気をもらい、花園の自然回復力を目にすることで、自らも元気を取り戻し健康になっていく。翔もまた、アリエッティと出会うことで生きる力を信じる気持ちになる。

 翔がアリエッティに「残酷だけど、君達は滅びゆく運命なんだ」と言うのは、翔の破滅思考を表している。生き物はみな死に向かっている、みんな死ぬ、生物は絶滅を繰り返してきた、だから自分が病気で死ぬのも自然なことなのだ。そう自分に言い聞かせているようだ。アリエッティは「私達はそう簡単には死なない!」と言い返す。翔の失っていた自然の生命力が、小さい彼女から迸り翔を撃つ。その時彼はコリンのように、絶望の闇からすーっと掴みあげられたことだろう。

 この物語は少女アリエッティが未知の外の世界に出て行く自立の初期段階を中心に描いている。けど、病気で死を見つめる少年翔が、簡単に諦めずに生きる力を取り戻す話でもある。自然の力強さ、生命のしぶとさをアリエッティから感じるのだ。アリエッティよりも翔の抱えるテーマが重いせいで、私は視点が翔に寄ってしまった。翔の心の動きはよく理解できる。でも2人の短くも強い友情は、アリエッティにとってどんな意味があったのだろう。

 そうそう。翔の友達はもう1人いる。猫のニーヤ。でっぷりしたブチ猫で、冒頭ではカサカサと姿を隠して逃げ回るアリエッティを追い回している。ニーヤ、可愛い!そんなニーヤだけど、アリエッティが堂々と姿を現しきちんと向き合うと、追いかけ回すのをやめる。小人は未知のものが怖いから、姿を見られないように隠れる。でもコチラは小人に危害を加えるつもりはないんだ。お手伝いのハルさん(声:樹木希林)にしたって、可愛いモノを自分だけのものにしたくなっただけ(映画の中で一番子供なのはハルさんだと思う)。怖いから身を隠しているってのは、余計追いかけられて危険な攻撃を受ける元じゃないかな。

 他にも庭にいる動物、カラスさん。ニーヤがアリエッティを攻撃しようとした瞬間、上からニーヤの背中を突く!その後、翔がアリエッティの姿を見ようとする場面で、突然網戸に突っ込んでくるカラスさん(可哀想)。このカラスの行動は謎だけど、たぶん小人を守っているんだと思う。人間に見つからないように、猫にやられないように。

 アリエッティには新しい生活が待っている。寂しそうな彼女に、スピナーがぶっきらぼうにラズベリーの実を差し出すのがとても可愛かった。多摩ナンバーの車が走る地域にラズベリーが自生しているのかは謎だけど。
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関連作品のようなもの
床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)原作は英国の児童文学。原題は"The Borrowers"で借りる者達。
床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)
メアリー ノートン
小人の冒険シリーズ 全5冊セット (岩波少年文庫)床下から野に出て、川を下り、空を飛び、新しい家を建てる5冊セット。
小人の冒険シリーズ 全5冊セット (岩波少年文庫)
メアリー・ノートン
秘密の花園 (福音館文庫)翔がベッドで読んでる本。映画の背景にアーチの門の花園も見えた。
秘密の花園 (福音館文庫)
フランシス・ホジソン バーネット
Kari-gurashi~借りぐらし~(借りぐらしのアリエッティ・イメージ歌集アルバム)主題歌の英語バージョン等全14曲収録のイメージ・アルバム。
Kari-gurashi~借りぐらし~(借りぐらしのアリエッティ・イメージ歌集アルバム)
セシル・コルベル
借りぐらしのアリエッティ サウンドトラックサントラは全22曲。ケルティック・ハープの音色満載!
借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック
セシル・コルベル

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