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スプライス 【モンスター 人の心に 棲まうもの】

tag SF ホラー サスペンス

『スプライス』 SPLICE
2008年・カナダ=フランス=アメリカ
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の遺伝子操作SFサスペンス!

 『CUBE』ヒット後、2000年に製作しようとして予算の都合で実現しなかった。それがやっと作られた。そしてようやくの日本公開!待ってたよ、ナタリ!製作総指揮にはギレルモ・デル・トロ、ドン・マーフィー、ジョエル・シルバー等大物が名を連ね、主演は素晴らしい演技者エイドリアン・ブロディサラ・ポーリー。凄いぜ。かなりエグイ場面もあるけど、だからこそ他にはない映画になっていると思う!

 タイトル"splice"は接合、つなぎ合わせること。ここではDNAやRNAを接合して、遺伝子操作を施した新生物の誕生を意味している。ヒトのDNAと動物のDNAを掛け合わせた生物を造りだし、そこからアルツハイマーや癌の治療薬の元となるタンパク質化合物をとれたら…。という科学的探求。もしくは私的欲求。

Ost: SpliceSplice オリジナルサウンドトラック

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演:エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、デルフィーヌ・シャネアック

モンスター・ホラーのフリをして、人間のモンスターっぷりを描いた映画



 まずオープニングがカッコイイよ。レントゲン写真がバシバシ出てくるのだけど、ワーナーブラザーズのロゴマークやダークキャッスルのロゴマークもレントゲン写真様なの。ワーナー映画は、大体映画に合わせてロゴの雰囲気を変えてくるのが素敵!と、いつも思う。

 ヒトのDNAと動物のDNAを接合して生まれてきた新種のドレン(デルフィーヌ・シャネアック)。彼女を作り上げた科学者夫妻クライブ(エイドリアン・ブロディ)&エルザ(サラ・ポーリー)。この夫婦の名前は『フランケンシュタインの花嫁』のフランケンシュタイン博士(コリン・クライブ)と怪物の花嫁(エルザ・ランチェスター)を演じた俳優からの引用。生命を造りだすことに憑かれ、哀しい怪物を産み出してしまった。この映画に相応しい名前。

 フランケンシュタインの怪物のように、新種ドレンは人の心を持ち、自我が確立していき、愛情に飢えていく。なぜ、私には髪の毛がないの?なぜ私はヒトと違うの?この世に独りぼっちなの?彼女はちっとも悪くない。ただただ可哀相で切なくなる。

今回の画像はココから!
Splice_wall04_1600x1200.jpg

 エルザが自分の子を産みたがらず、そのくせドレンを我が子扱いする様子は異常だ。エルザの母親のエピソードはチラっとしか語られないけれど、自分が嫌悪していた母親と結局は同じようなことをしてしまっている。まあ、それはよくあること。でもドレンは実験体であり、人間ではないから。より支配的に、子供と言うよりはペット扱いしても誰にも責められない。

溺愛しているのかと思えば、彼女の欲するモノをわざと取りあげたり。自分のコントロール下において、権力を行使し、驚くほど冷酷にもなれる。彼女を傷つけても、実験動物だから構わないというように。母性を満足させながら、自分の好きなように相手の行動を制限できる。エルザこそモンスターだ。

 一方クライブは、最初からこの実験には反対だった。科学的好奇心はあるものの、やはり倫理的に問題があり、何が起こるのか恐ろしいから。早くこの実験を終わらせたいと願いつつ、ドレンを憐れみ、次第に人格を認めていく。でもクライブも、何て言うかちょっと衝動的で、決して人格者ではない。

splice_icon_03_96x96.gif ドレンの孤独と哀しみは、猫への態度によく表れていた。納屋に入ってきた猫に触れ、撫で、抱きしめる。愛すべき小さな存在。でも、エルザに「ペットは良いものよ」と言われたとき、猫と自分を同一視して猫を憐れむのだ。このシーンが一番好き。

 実際に医学的用途―臓器育成などの為にヒトと動物のハイブリッドは研究されている。そういう現実を考えると更に、難しい問題を提示されているように思う。そのイキモノは、あなたが好き勝手して良いのですか?と。映画のラストには、エルザがドレンの悲劇から何も学んでいない様子が見て取れる。エルザの中では、ドレンはあくまで実験動物であり、ドレンが辛かろうと知ったことではないのだ。そうでなければ、あんな選択はしない。モンスターはやっぱり彼女だ。

Splice_wall01_1600x1200.jpg

 ちょっとエー!ありえねー!って思ったのが2点。一つ、未知の生物の体液が付着したナイフを口にくわえる科学者はいない!一つ、サンプルを扱うラボでピザ食べたり珈琲飲んだりもしない!私が働いていたラボでは飲食物持ち込み禁止でしたよ。自分の身を守るために必要な最低限のルールだと思うんだけど。

でも、それ以外はおよそ有りそうな話だった。新生物ジンジャーとフレッドに起きた雌雄転換も、魚やカエルや昆虫など動物界にはよくある話。環境や自らの体格に応じて性転換が起こったりする。魚ならブダイやカクレクマノミなんかが有名。まあ、ほ乳類では性転換起こらないのがセオリーだけども。(ほ乳類は最初は雌で、Y染色体があれば雄に変化し固定される)

splice_icon_02_96x96.gif 映画ネタもあるよ。ホルマリン漬け標本のラベルに“シド&ナンシー”、“ボニー&クライド”なんて書いてある。実験成功した新生物のツガイの名前“ジンジャー&フレッド”は、歌って踊れるあの二人、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアから取ってるんですな。夫婦の寝室、ベッドの頭上に飾ってある絵が日本の漫画絵なのだけど、あれは何だかわからないや。ヤツらが来るぞ!って書いてあった。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) この映画を観て想起したのは、グレッグ・イーガンのSF短篇『キューティー』と中篇『祈りの海』。どちらも短篇集『祈りの海』に収録。

『キューティー』は遺伝子操作で作った赤ん坊の代替物の話で、キューティーの哀しい運命と、キューティーを溺愛した男の悲劇。『祈りの海』は雌雄転換のエピソードが出てきます。超オススメ。

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